キャラクターの性格とは、作品において重要な個性となる。
魅力的なキャラの多い作品は、それだけで物語の質もぐんぐん上がる。

では、魅力的な個性とはどうのように作るのか?
私はキャラクターの性格を掘り下げていくことが、魅力的な個性作りには重要だと考えている。

今回はキャラの掘り下げ方と、そこからの個性付けを解説していこう。

キャラの性格にリアリティを取り入れる

『短気』な性格と言った場合、どのような行動を想像するだろうか?

例えば、不機嫌になると指で机をトントンと叩く。
何かを待っていると貧乏揺すりをする。
気分を落ち着けるために煙草を吸う。
自分発言を否定されるとすぐに怒鳴る。

こういう特徴は上げていけば色々と出てくるだろう。
一番わかり易いのはそのキャラクターを動かす時に、上記のような行動を文章に組み込んでいくことだろう。
特に会話の流れに組み込んでいくと、会話のリズムを作るのにも役立つ。

しかし、こういう誰でも連想できてわかりやすいものばかりだと、個性という意味ではテンプレート的で薄っぺらくなってしまう。
よくあるキャラのコピペ的なキャラ付けは、性格は表しやすいが反面面白味に欠けるキャラとなる。

キャラの性格に強い個性を結び付けるには、読者にリアリティを感じさせるのが重要だ。

役割的に重要度の低いキャラ、モブキャラ等ならこういう作り方でキャラ性を作るのは悪くない。
脇役にまで強い個性を付けると、その分メインキャラが食われて相対的に薄くなってしまうためだ。

テンプレートというものは作品作りによく使われる表現であっても、実際に多い人物像とは限らない。
ラノベやアニメのようなわかりやすいツンデレキャラは、現実では希少種、場合によっては奇行種に近い扱いを受ける。
雨降ってすぐ風邪を引く展開なんかも、現実だと虚弱体質かよと思う。

先の例であっても、短気で貧乏揺すりをするのは一部だけであり、全員がそうというわけではない。
ぱっと思いつく表現というのは、それ自体が漫画やテレビで刷り込まれてきたお約束的な表現であることが多いのだ。

では、もっとリアリティのある行動とはどうやって探すのか。
簡単な方法は自分の身の回りにいる人や、ネットで探すのが楽だ。

Googleで『短気 特徴』と打ち込んで検索すれば、キレやすい人の特徴一覧がザクザク出てくるだろう。
最近の検索結果は情報の網羅性を優先しているので、ちょっとした検索で簡単に見つけられる。

実際にネットで見つけた短気な人物の特徴として、『周囲の人からの評価が気になる』という性質があった。
短気で周囲に怒鳴り散らしながら、同時に周りの人間からの評価に聞き耳を立てている。
そういう人物像はそんなにしょっちゅう出てくるものではないし、普段の短気さとのギャップもあって面白い。

『短気な人間程実は気が弱い』や『自分の意志を無理やり通して立場を作りたい』と他にも結びつきやすい特徴もある。
(全部短気な人間の特徴なので当然といえば当然だ)

上官キャラですぐに部下を怒鳴りつけるが、それは自分の意見を無理やり通して偉ぶり、自分の立場を作りたいから。
『立場を作る=出世したい』ため、周囲の評価をかなり気にしている。

こういう特徴を複数絡めた『短気な人間な性格像』を組み上げていけば、オリジナリティとリアルさが合わさった個性の強いキャラが作れる。

とはいえ実のところ、そういうキャラクター自体は探せば他にもいるにはいるだろう。
しかし特徴が出来てそれに沿ったバックボーンがしっかりしてくれば、性格に絡めた設定を肉付けができるため、よくある薄っぺらなキャラにはならないという側面もある。

仕草や行為に理由を付ける

ほとんどの場合において、人間の行動には何かしらの意味や理由があるものだ。

先程出した『短気な人間程実は気が弱い』という特徴だと、『自分を大きく見せたい』という思想が根底にある。
けど小心者なので相手にキレられるのは怖い。
なので先にキレる。
相手が自分より目上だったり、恐ろしい人物だったりするとキレない。
という理屈が紐付いてくる。

人物像を掘り下げるとキャラに厚みができて説得力が生まれる
これは更に掘り下げることが可能だ。
そういう時は『何故』と理由を追求していくのがやりやすい。

  • 何故『小心者』な性格になってしまうのか。
    → 小心者なのは幼少期にガキ大将に虐められていたため。
  • 何故虐められていたのか。
    → 裕福な家庭に生まれたが、体が弱かったためガキ大将に目を付けられた。
  • 何故体が弱かったのか。
    → 生まれつきの病を患っていた。
     そのためひ弱な体付きで発育が悪く背も低い。

このように性格をより深く掘り下げていけば、それらはキャラにしっかりと根付いた独自の個性となる。
関連付けがしっかりとしていれば、おのずと設定的な破綻も減るという効果もあるためオススメだ。

またしっかりと下地が作れたならば、その人物のどういう側面を強く出すかを考えよう。
強く怒鳴り散らす部分を強調して書くと、弱い部分を隠すため相手に対して過剰に反応する攻撃的なキャラクターという印象を強められる。

小心者の部分を強く押し出すと、権力者にペコペコと頭を下げて、自分より弱い者には強くあたる小者なキャラクター像を描きやすくなるだろう。
リアリティを重要視しつつ、一部を強調して書くことでキャラをデフォルメ化して強い印象を読み手に与えられる。

性格とは直接結び付かない癖を付ける

理由付けによる掘り下げの要素は、必ずしも性格を直接示すものである必要はない

よく汗を拭く動作を行うキャラクターがいるとしよう。
汗を拭くという行為は、繋がりで太っていて汗っかきだったり、焦ると汗をよくかくなど、自信のないキャラの性格付けによく使われる。

それを真逆の属性に当て込むとどうなるだろうか。
髪を金髪に染めていて友達も多くてクラスの人気者だが、同時に自信家でチャラチャラとした印象のある少年。
女子にも目に見えてよくモテモテで、土日はよく女の子と二人で遊びに行く姿が目撃されるが、特定の彼女はいない。

こういうキャラクターが汗をよく拭く癖があると言われても、一般的な汗かきとのイメージが合わず、違和感のある設定付けになってしまう。

そこで汗を拭くという癖に少し付け足しを加えて、『女の子が怪我をして血が出た時や、危険な目に遭った時に汗を拭く癖が出る』としてみよう。

こうすると、汗を拭くという行為自体に意味付けが成された。
読み手は何か理由があってそういう行為をしているのではと考えるようになる。

次に、汗を拭くという行為に対する理由付けだ。

  • 何故、女の子が怪我や危険な目に遭うと汗を拭く動作を見せるのか。
    → 実は以前、恋人が事故に遭った少年を庇い、代わりに死んでしまった。
    その時に返り血を顔に浴びて、女の子の血や事故を目撃すると当時のことがフラッシュバックする。

つまり一見すると汗を拭く動作なのだが、実はトラウマによって血を拭うような仕草を取っていた。
特定の彼女を作らないのは、自分のせいで死んだ恋人に対する未練や罪悪感。
そして事件によるトラウマによって、また同じことが起きたらと彼女を作れなくなってしまっている。

結果、自信家だが女の子との付き合いに一定の距離を置いてしまう、実は臆病者という性格付けができた。
性格を表す記号は特徴に合致させなくても、一工夫加えることで重要な要素となり得る。

大事なのは設定を掘り下げ、性格と行為を理論的に結び付けることだ。
例よりもっとわかりやすいような癖と理由でも構わないし、本人は自分自身の癖に気付いておらず、深層心理に結び付かせた無意識の行為にしてもいい。

こういう癖付けは伏線として扱えば、ミステリー要素にもなり、話のドンデン返しとしても使える。

設定の掘り下げを使い特徴的な性格付けをすれば、そのキャラの性格を唯一無二の個性にもできて、かなり強い独自性が生まれる。
またここまで強い個性だと、それそのものがストーリーの中核に配置できるため、ストーリー上における性格の表現方法や扱い方に困ることも少ない。
つまり読み手の印象に残りやすいキャラにできるのだ。

今回のまとめ

  • 個性的な性格はオリジナリティから生まれる
  • 個性を深めたいなら性格を掘り下げる
  • 性格のどこを強く見せるかで読者から見える個性も変わる
  • 掘り下げた理由によってキャラとそぐわない癖から性格を作って強い個性を表現できる