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 人は夢を求める。
 夢のような世界を求める。

 けれど夢に溺れることは拒絶する。
 夢とはいつか覚めるものだと決めつける。

 本当にそうでしょうか?
 貴方達の滅びた後の世界では、ああ、彼らはこんなにも自由に夢のような世界を生きているのに。

 貴方達は今も求めているではないですか。
 現実に虚構を生み出して、世界を、果ては自らの肉体すら置き換える。

 この空間こそが貴方達の遺した夢の跡ならば。
 七百七十のきざはしを降りる必要はありません。

 誰もが見られる夢の世界。
 人が至った夢の果て。

 幸福の理想郷を与えましょう。
 揺蕩う海から零れ落ちた、かつて願った夢の残滓でしかない、わたし達が。

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