僕の横に座る人。
僕はこの人が気になっている。いや、気になってしょうがないんだ。
学校なのにいつも青いつなぎを着て、足を組み左腕を後ろに回している。
他の男子と目が合うと、彼は決まってこういうんだ。
「やらないか」
何を? っとは、誰も聞かない。
けれど、時折彼は他の男子とどこかへ消えていく。
彼が消えた後は、決まって近くのトイレからくぐもった声が聞こえる。
その時間帯に誰も近寄らないのは、暗黙のルールだ。
一人そのルールを破った友達がいたけれど、そいつはすぐ青ざめた顔をして戻ってきて静かに座り、帰るまでずっと黙ったままだった。
数日後、今度はその友達が隣の彼と一緒にトイレへと――
恐かった。同時に何故か興味もある。
僕はその狭間で揺れながら、けれど不可思議な誘惑から耐え抜いた。
ある日、僕の隣に公園が出来た。
いや、正確にはずっと作られていて、ようやくそれが完成したのだ。
僕はどんなものだろうかと、その公園へ行った。
そこに彼はいた。
真新しいベンチに座り、教室の椅子でそうするように、左腕をベンチへ。
右手はつなぎのホックをつまんでいる。
そして彼はホックを――下ろした。
学校でもそれはやったことがないのに。
そして、見えた。
大きい。
それだけしか言えない。
そして彼は言った。
「やらないか?」
それはいつもの何倍も魅力的に聞こえて、僕は――
「ウホッ!」