戦姫絶唱シンフォギア × 仮面ライダーオーズ クロスオーバーSS(二次創作小説)

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 ビルが立ち並ぶ歓楽街の風景。
 本来なら数え切れない人の往来があるはずだが、今この場には二人だけが佇んでいる。

 一人は黒髪で異国風の衣装を纏った青年、火野映司。
 もう一方は癖のないロングヘアに凛とした表情の美女、風鳴翼。

 二人は同時に各々が持つ力を開放する。
 ベルト型のドライバーと、ペンダント型のコンバーター。
 形状の違いはあるが、どちらも歌を変身のキーとする。

「Imyuteus amenohabakiri tron」

『タ・ト・バ! タトバ! タ・ト・バ!』

 基本フォームのタトバコンボに、メダジャリバーを構え、オーズが突撃する。
 青いギアを纏った翼は、歌いながら天羽々斬から生み出された刀を手にそれを迎え撃った。

 最初こそ剣戟は拮抗していたが、常に刀を主武装とする翼にとって、ここは決して引けぬ領域。
 手数と相手の剣をいなす技術で少しずつオーズを押し始める。

「はぁっ!」

「ぐあ!」

 刀が袈裟にオーズの肉体を斬り裂き、火花が散る。
 たまらず後退るとベルトのメダルを切り替えた。

『タカ! カマキリ! バッタ!』

 両手に短剣を携えるタカキリバフォーム。
 オーズもまた手数を増やして刀を受け止めつつ、その隙を突こうと連撃を仕掛ける。

 相手の手数が増えたと判断するや否や、翼は足のブレードを展開。
 逆羅刹。
 逆立ちしながら横に回転を入れて、高速の連続斬撃を見舞う。

「はやいっ! うぐっ!」

 オーズはその勢いに押し負けて、再びメダルをチェンジ。
 今度は三枚全てを入れ替える。

『シャ・シャ・シャウタ! シャ・シャ・シャウター!』

 響の救出にも使用されたメダルコンボの一つ、シャウタ。
 水中戦を最も得意とする青のコンボだが、使い道は他それだけではない。

 大勢を整え直し直立姿勢に戻った翼は、胴を薙ぐように一閃。
 それは確かにオーズを捕らえ、狙った位置を横に裂いた。

「人の身で……この力っ」

 しかし、刃がすり抜けた。
 空を切る、どころの話ではない。
 オーズの体が液状化して、振り抜いた刀には手応えすらないのだ。

 水の塊と化したオーズは翼の背後に回り込んで、再び元の姿に戻る。
 続けざま、手にした二本の鞭を彼女へと振るう。

「たあ!」

 反撃が間に合わないと判断した翼は、手にした剣にて攻めを受ける。
 しなる鞭は刀に絡みつき、そこから強烈な電撃が放たれた。

「うああああああ!」

 刃を通して、電撃は体へと流れ込む。
 コンボのよってオーズの能力は向上していることもあり、シンフォギアの耐性がなければ感電死は免れなかったろう。

 あえて剣を手放して電撃から開放される。
 翼は短刀を一つ手にして回り込みながらそれを放つ。

 放たれた一撃は、けれどオーズの体に当たることなく、彼の足元へ突き刺さった。
 オーズは再び液状化しての撹乱を行おうとするが、体に謎の異変が生じる。

「動け……ない!?」

 予測してない事態にオーズが焦っている間に、翼は跳び上がった。

 天の逆鱗。
 そして大剣を生み出して、蹴りと共に勢いをつけて落とす必殺の一撃。

『そこまで! 勝負ありよ!』

 部屋に終了を告げるオペレーターの声が響くと、景色が町中から無機質な金属に囲われたそれに変わる。

 巨大な刃は、オーズのすぐ目の間に突き立てられていた。
 翼があえて狙いを外したのだ。

 翼が影縫いを解除すると、オーズもまた変身を解除して火野映司の姿へと戻り、その場に尻もちを付いた。
 映司は荒い呼吸を繰り返しており、行儀の悪さを気にする余裕もない程消耗しているようだ。

「いやあ、参ったよ。まさかシンフォギアにあんな力まであるなんて」

「影縫いは天羽々斬の力ではなく忍術です」

 相手の影に剣を突き立てることで、身動きを封じる技。
 あれはシンフォギアの能力によるものではなく、翼が個別に習得した技である。

「翼ちゃんは忍者の技まで使えるの! やっぱりすごいなあ」

「それを言うなら、液状化する技の方がよっぽど不可思議なのですが……」

 ノイズですら、自らを水に変える力を持った個体なんて見たことがない。
 液状化に影縫いが有効かは一か八かの賭けだった。

「二人共お疲れ様だ」

 トレーニングルーム扉が開き、二人の男が入ってきた。

「お疲れ様です。弦十郎さん。それにアンクも。すみません、こんな格好で……」

「気にしなくていい。相当疲労が溜まっているだろう。楽にしていてくれ」

「ふん、メダルの器があれぐらいで情けない。というか、コンボを使っておいて負けるな!」

「まあそう言ってやるなアンク君。本日三度目のコンボだったのだからな」

 二人のトレーニングを兼ねた模擬戦は、今のが初めてではない。
 今日一日だけでも、休憩を挟みながら何度も行われていた。

「ええ、それにコンボを相手に勝利を収めたのはこれが初めてです」

 コンボはそれだけで基本的な出力がかなり上昇している。
 それにノイズが相手の団体戦はともかく、一対一の戦闘は映司の方が慣れていることもあり、二度連続で映司の勝利が続いていた。

「ごめんアンク……でも体はコンボに大分慣れてきたよ」

「やはり昔と同じか……そのための訓練でもあったからな」

 今いるシンフォギアの世界に渡るよりももっと前、映司がコンボを使い始めた頃、肉体がその負担に耐えきれずボロボロになっていた。
 アンクも当初は危険だと映司にコンボを禁止していた程だ。

 しかしコンボを繰り返すうちに、彼の体は段々とコンボの負荷へと順応していった。
 前回の実戦でシャウタコンボに耐性が見られたことから、次の戦闘前に模擬戦で肉体を慣らそうという話になったのだ。

「それに、やはり歌だな」

「ああ、やっぱりですか?」

「うむ、こちらでもモニターしていたのだが、翼の歌に天羽々斬だけでなくオーズの力も反応を示しているようだ」

 装者の歌はシンフォギアの力をより活性化させるが、同じくオーズの肉体も歌に反応して性能が向上している。

「俺も変だなって。翼ちゃんや響ちゃんの歌を聞くと力が湧いてくるんですけど……」

 同時に、体がどんどん重くなっていくような感覚を覚えていた。

「シンフォギアは固着式のエネルギープロテクター。言わば体を纏う一種の鎧のような役割もある。しかし驚くべきことに、オーズの変身は映司君の肉体そのものを変化させていた。その分歌の負荷がダイレクトにかかってるようだ」

「肉体そのものを。それで体の液状化を可能に……」

「そういうことだ。特にコンボは負荷がデカい。だからまだ暫くはお預けってことだ」

「前回はコンボの後すぐ水中戦となり、歌を聞き続ける時間も少なかった。恐らくそのおかげで負荷が減ったという要因もあるだろう」

 オーズも一見するとまるでメダルのエネルギーが体を包むように変身するので、翼は鎧の一種だと考えていたらしい。
 シャウタコンボ以外にも、バッタレッグなど、オーズは時折肉体そのものを大きく変化させる形状を取る。にわかには信じがたい現象だが、目の前で何度も目にすれば信じる他ない。

「でも、翼ちゃん達の歌がないとノイズには対抗できないんだろ?」

「ふん、そういうことはコンボに耐えきれるようになってから言え」

「厳しいなあ、アンクは」

「そこは仕方あるまい。我々も映司君に過度な負担をかけるわけにはない。それにコンボなしでもオーズには十分助けてもらっている」

 これはお世辞でもなんでもなく、シンフォギア以外でノイズに真っ向から対抗できる存在はそれだけで稀少なのだ。

「ええ、それに何もコンボだけが切り札ではありません。メダルの柔軟性に天羽々斬との連携がれば、我らは鋭利な刃にも強固な盾にも、まさしく千変万化となりましょう」

 二人の訓練は一対一の模擬戦以外にも、シュミレーターでノイズを再現してコンビネーションでの戦いも試している。
 互いの力を理解しながら戦術の幅を広げている最中だった。

「うん、そうだね」

「おい映司。そろそろ時間だ」

「あ、もうそんな時間か」

「二人共、今日はもう上がってくれてかまわない。お疲れ様だ」

 少し休憩して回復してきた映司が立ち上がった。
 肉体の消耗も考慮して訓練時間は区切られている。

「はい、お疲れ様でした。翼ちゃんは?」

「わたしはこれから歌女としての責務があります」

「ああそっか、アイドルとしても活動しているんだったよね。芸能活動との両立かあ。俺にはとても真似できないよ」

「いいえ、まだまだ至らぬことの多い若輩の身です。映司さんは、やはり今日も立花の元へ……?」

「ううん。今日はアンクのアイスとか色々と買い出しにね」

 無欲な映司でも、暫くこの地に定住するとなれば最低限の生活用品くらいは必要になる。
 それにアンクのアイス費用は二人の個人的契約として、あくまでも映司の支払いとなっていた。

「本当は響ちゃんにも会って話したいんだけど、友里さんにあまりしつこすぎると女の子は逆に警戒するって注意されちゃって……俺、女心とか理解するのすごく苦手だから」

「なるほど。そういうことでしたか」

 諦めたわけではないにしても、やはり響へのコンタクトは順調とはいかないようだった。

「いつまで無駄話している。さっさと行くぞ」

「はいはい、あ、ちょっと待てって……。それじゃ、またね。弦十郎さんも、本日もありがとうございました!」

「ああ、シュミレーターはオーズがもっと適応しやすいよう、俺が調整してみよう。映司君は疲労も残っているだろうから、気を付けてな」

 最後に改めて挨拶を交わしながら、映司とアンクは訓練施設から出ていった。

「立花響……か」

 勢いで映司が響を二課へと連れ込んで、少しずつでも彼女を更生していく。
 それが理想であると頭では理解していても、心の何処かで上手くいっていない事実に安堵している自分がいることに、翼は気付いていた。
 ガングニールの装者、自分にとっての片翼は――


どうしてもコンボが絡むとオーズがメインになるので、シンフォギア側も活躍させるシーンが書きたい今日この頃。
(プロットは既に書き終わってるので今後の展開は決まってますが)

モチベーションアップのために作品評価をお願いします!(切実)

 

仮面ライダー感想・考察ブログも書いています。
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