戦姫絶唱シンフォギア × 仮面ライダーオーズ クロスオーバーSS(二次創作小説)

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 映司は見知らぬ白い部屋ベッドに体を横たわらせた姿で目覚めた。
 病院かと思ったが、やってきたドクターの話によると、どうやらここは共闘した翼という少女が所属している機関の医務室らしい。
 気絶は極度の精神と体力の消耗によるもので、一晩眠っていたことでほぼ回復していた。肉体への大きな影響もなかったようだ。

 火野映司という青年は長い時を外国への旅で過ごしてきた。

 その多くは新天地で未知の冒険。知らなかった価値観や生活様式。そして新たな出会い。
 それらはまさに旅の醍醐味であり、映司はその全てが好きだった。

 たとえ強制的に平行世界へ飛ばされたのだとしても、その先にいる者達が悪人とは限らない。
 であれば、この地の冒険と戦いも他と変わらない、旅の一つなのだ。

 そう思えば不安はあれど同じくらいワクワクもする。
 ノイズから世界を守る、仮面ライダーではない平和の守護者。風鳴翼と名乗った少女は自分を防人と称していた。
 きっとこれから行先に待っているのは、この世界で逞しく生きている映司の知らない人ばかり。

 実際映司の現在地はなんと学校施設で、その地下にあるという仰天の秘密基地だった。
 そこのブリーフィングルームへ入るとまず、歓迎の言葉でもって迎えられた。

『ハッピーバースデー! オーズ!』

 派手なスーツでケーキを手にした、とてもよく見知しっている男がモニター越しに映司の視界を占拠した。
 モニターの周りにも数名の人が待機していたが、そちらはアンクを除き見知らぬ顔ばかりではある。
 そしてそのアンクでさえ、この展開は知らされてなかったらしい。

「鴻上! 何でお前が!」

 またお前か! という意味を込めてアンクがモニターに映る鴻上を睨みつけた。
 いきなり喧嘩腰はどうかと思うが、これは映司も全くもって同意見である。
 平行世界の別人という線もあるが、

『そう睨まないでくれアンク君。私は新天地でのオーズ誕生を祝いたいだけだ』

 モニターの中で楽しそうに笑う鴻上の姿は、映司の知る彼そのものだ。ならばこちらの話は通じるだろうし、現状の確認はできるかもしれない。

「あの、つまりここはやっぱり平行世界ってことですか?」

『正解だよ。理解が早くて助かる。君達二人はオーズとグリードのいない、もしくは未だ現代では発見されていない世界にいる』

「俺達は……つまり鴻上さんは俺達の世界の鴻上さんですよね?」

『うむ、その辺は少々ややこしい話なのだよ』

「ここから先は俺が説明しよう」

 鴻上が少しばかり困った顔をすると、待機していた一人が間に割って入った。
 ネクタイを胸のポケットに収めている、赤髪でがたいの良い男である。

「ここは特異災害対策起動部二課、俺はここの司令官をしている風鳴弦十郎だ。まずはここへ来てくれたことを歓迎させてほしい」

 一見すると強面であるが、弦十郎は力強く爽やかな笑顔で手を差し出し握手を求める。映司は迷わずそれに応えた。

「風鳴……」

「君が助けてくれた風鳴翼は俺の姪にあたる」

「火野映司です。こちらこそ助けていただいてありがとうございました!」

 オーズ関連で出会ってきた者達の癖が強過ぎて、映司にはむしろひどく真っ当な人間に見えた。

「むしろ君達の助力があったおかげで住民の被害は最小限で済んだ。この世界の代表として礼を言われせてくれ」

「いえ、そんな。俺はただ自分の届く範囲で手を伸ばしただけです」

「そして君が……」

 弦十郎はもう一人の異世界渡航者へと視線を移すが、当人はそっぽを向いている。

「彼はアンク。なんていうか人間ではなくて、ああいうヤツなんです、すみません」

 何故か映司が代わりに謝って、アンクを紹介する。
 こういう流れも何処か懐かしさを感じた。

「ああ、大丈夫だ、その辺も鴻上さんからある程度話は伺っている。錬金術から生まれた知的生命体、グリードだったな」

「ふん、ならオーズについても、お前は知ってるってことになるな」

「鴻上さんから連絡が入ったのは映司君が休んでいる間でな。その間にことのあらましは聞いた。確かに複雑な状況のようなので、一つずつ順番に話していこう」

 最初に説明されたのは、この世界についてだった。
 先程鴻上が語ったように、オーズやグリードが存在していないこと。
 そしてグリードとは異なる、人類を脅かす災害ノイズの存在について。

 生命体のような姿形をしているものの、意思疎通は完全に不可能。
 突如空間から滲み出るように出現して人間のみを標的に襲いかかる。
 しかも一般的な攻撃は減衰されてしまいほぼ通じない。

 対処方法は、映司が目撃したように襲われた人間は炭素化して死に至るが、それと同時にノイズも炭素化して崩壊する。
 もしくは一定時間経過による自壊。この二つだけ。

 だが、唯一の例外として、ノイズの対抗し得る唯一の装備が存在する。

「それが聖遺物により作られたシステム……君が共に戦ったシンフォギアだ」

「翼ちゃんや響ちゃんが変身していた姿ですね」

「うむ。装者の歌は、ノイズの減衰能力を落とすことができる。そしてシンフォギア自身は、ほぼ完全に減衰の無効化が可能だ」

 まさに対ノイズの切札というべき存在なのがシンフォギアだった。

「それでオーズの攻撃も通用したんですか?」

「ああ、理由は不明だが、オーズは元々他の兵器に比べて減衰効果の影響自体が少ないらしい」

「オーズだけじゃない。同じメダルから作られている俺もだ」

 アンクが、弦十郎の解説に補足して付け加えた。
 恐らく、アンクはアンクでこの世界を調査して、自分の体を使って攻撃が通るのを確認していたのだろう。
 アンクならば炭素化を受けても、最悪腕だけを切り離して逃げられる。

「だから響ちゃんが現れて俺にメダルを渡したのか」

「渡さなきゃお前は生身で馬鹿やって炭になってただろうからな」

 無茶をしていたのは否定できない。
 けれどああすればアンクはメダルを渡すだろうという、映司なりにアンクへの信頼があったことも事実だった。

「その響君なんだが、彼女は二課の所属ではない」

「はい、それは翼ちゃんから聞きました。一人で戦っているって」

「ああ、元々は二課にもう一人いた装者が使用していた聖遺物ガングニールの破片が、彼女の胸に埋まっている。それが彼女のシンフォギアとなっているようだ」

「もう一人いた……」

「もう一人の装者は既に戦死している。翼君の相棒と言える存在だった」

「奏の生き様は、私の胸に誇りとなって生き続けています。だからこそ、奏のガングニールをただ暴れるために使う立花は……」

 その先の言葉が否定的なものなのは、聞かずとも察せられた。

「そっか……」

 細かな経緯はわからないが、奏という人は翼にとって相当に大事な人なのだというのはわかる。
 そしてどうして翼が響に対して当たりが強いのかも。

「うむ、少々脱線してしまったな。話を戻そう」

 ノイズの出現は元々そんなに高くはないものらしい。
 世界政府が出した試算としては、一般市民が通り魔事件に遭遇するよりも低いそうだ。
 しかし、それがここ最近増加している。
 それに原因不明の巨大なエネルギー反応も出ているらしい。。

「つまり、俺がこの世界へ来たタイミングはその反応の出現と大体重なっているってわけか」

「ああ、その通りだ。君達の世界で作られたグリードホルン、それと何か関係があるのかもしれん」

「でも、俺とアンクはこの世界にきたタイミングが違う」

 映司がこの世界に来たのは昨日だ。話によれば、少なくともアンクは更にその数日前には来ていて、ノイズやシンフォギアをリサーチしていたことになる。

『それは君とアンク君がそれぞれ別の平行世界から移動しているためだ』

「そうか、それで……」

「それで、何だ?」

「その、いや、何でもないよ」

 ここにいるアンクは、自分と共に戦ったアンクとは違い、コアメダルが割れていない。
 自分の知るアンクとは違う流れにいるのか、それともこれから同じ結末に至るのかはわからないが、少なくとも今は伝えるべきではないだろうと思った。

「ふん、まあいい。お前の世界でも真木がグリードホルンを作ったのか?」

「ああ、それにあの真木博士は、多分アンクの世界の真木博士だと思う」

 これで真木博士が復活を遂げた理由も理解できた。恐らく彼は様々な平行世界をグリードホルンで繋ごうとしている。

『困ったことに、こちらの世界もグリードホルンの影響によってノイズが出現したのだよ』

「そんな、でもそっちの世界じゃ……」

 シンフォギアがない。つまりノイズに対抗できる手段がないのと同様だ。

『一応出現した分はこちらのオーズと後藤君達が何とかしてくれたのだが、二人共今はベッドの上だ』

「ノイズが相手で怪我をしたって、もしかして!」

『いや、二人共不幸中の幸いで炭化はしていない』

「真木が作った複製グリードも同時に相手をしたからな。財団Xだったか。全部倒したが、俺のコピーまで作るとは舐めた真似をしやがって……」

「それじゃあ、そっちの世界で今戦える人は」

『残念ながらいない。だがオリジナルのグリード達もあの場にいたのでね。戦闘のダメージもあって、今は身を潜ませている』

 向こうの伊達明は現在手術中なのか、それとも元々いないのかは不明だが戦力となる存在はいないらしい。
 つまりアンク側の世界は真木博士やグリード達とのまだ健在で、今は膠着状態になっている。
 ノイズ出現の危険性は映司の世界でも同じことが言えるのだが、その心配を口にしても状況は好転しない。

『それにこちらのグリードホルンは戦闘の影響でで破壊されてね、今は一種の特異点になっている』

「特異点?」

「何やらブラックホールみたいな空間ができていて、そこから電波を飛ばしてこちらの世界と連絡を取っているそうだ」

『グリードホルンを破壊しても、平行世界の繋がりは破壊しきれなかった。恐らくこの世界は他にも何かの理由があって繋がっているのだろう』

「我々二課も調査中だが、タイミング的にノイズの増加が関わっているのかもしれないと睨んでいる」

「つまりその原因がわかれば解決策も見つかるかもしれないんですか……?」

 それができれば世界は元通りになり、アンクと映司の両世界にノイズが出現する心配はなくなるはずだ。

「その可能性はあるだろう。我々も無関係な君達や世界を、できるだけ巻き込みたくはないのだが……」

「それなら俺も協力させてください!」

『素晴らしい! その迷いの無さ、まさに我々の知る火野映司君と同じだよ!』

 鴻上の讃えたように、そこで迷う映司ではない。
 話の流れ的にこのタイミングで申し出たが、たとえ自分の世界と全く繋がりのない話だとしても、同じことを言っただろう。

「ったく、帰る方法も定かじゃないだろうが」

 もしも異変が解決したと同時に特異点が閉じたら、その時点でアンクは帰れなくなる。
 それに映司とて無事帰れるという保証はないのだ。

「それは……多分だけど、ノイズが並行世界に関わっているのなら、俺達が戦えば真木博士だって何か動くかも」

 思いつきで言ってみたのだが、あり得ない話ではないと思う。

『アンク君、君がノイズとの戦いに協力してくれるなら、未発見の君のコアメダルが発見され次第、我々が手にしても無条件で君へ渡すと約束しよう』

「何っ! いいな、絶対だぞ!」

『ああ勿論だとも、これで契約成立だ!』

 鴻上は基本的には映司達に対して協力的だが、重要な部分で隠し事をしていることも少なくない。
 だが契約についてはきちんと守る。そこは企業として一定の信用があるのは、これまで取引してきたアンクもよくわかっている。
 そしてコアメダルを手に入れるという目的は、グリードにとってリスクを払ってでも望むべきものだ。

『そういうわけで、風鳴司令。二人の世話を頼めないだろうか』

「我々としても、願ってもない申し出です鴻上会長。二人共、心から協力に感謝する」

 正直、昨日のようなノイズ大量出現は、翼と全然連携の取れない響だけでは手が回らない状況だった。
 装者と共に戦えば、シンフォギアと遜色ない戦闘力を発揮できるオーズの参戦はありがたい。

「それと細かな手配は我々に任せてくれ。ここにいる間は生活に不便させないことを約束する」

『我々も、風鳴司令の思考が柔軟で非常に助かっているよ。それに送れるのは電波だけではなくてね。映司君に例のものを見せてくれるかな?』

「了解しました。あれを運び込んでくれ」

 弦十郎の命令によって二つのカートがブリーフィングルームに運び込まれた。

「これは……!」

 映司は驚きに目を見開いた。
 一つは自動販売機。それも鴻上ファウンデーションが作り出した、カンドロイド用自販機である。
 その正式名称はライドベンダーのマシンベンダーモードだ。

「メダルもだと!」

『無機物で数メートル程の大きさなら特異点から送り込めるのだよ。アンク君には肉体用に補給も必要だろう』

 もう一つのカートにはセルメダルが並べられ、小さな山となって積まれている。
 これには思わずアンクも不機嫌な表情を笑顔に変えた。いつもの悪人面には変わりないが。

『今回は我々、鴻上ファウンデーションも特異災害対策起動部二課に全面協力を約束した。それは餞別として自由に使ってくれたまえ』

「ありがとうございます!」

「カンドロイドだったか。こちらもまだそれの使い方は詳しく伺っていないのだが、説明も兼ねて一先ずの運用は映司君達に任せようと思う」

「いいんですか?」

「ああ、補給はかなりの余裕があるそうでな。事件解決のため惜しむ必要はないと言ってくださっている」

 モニターでは喜色満面の鴻上が頷いている。

『したようにしたまえ! 欲望こそが人間の原動力だ!』

 欲するままに求める。
 そのために人は奮起し、進歩し、新たな道具や概念を誕生させる。
 欲望こそが、鴻上光生を突き動かす言葉であり信念だった。

「元々かなりの量を渡してきたが、鴻上、お前現在どれだけのセルメダルを持ってやがる……!」

「まあまあ、アンク。おかげでこっちの世界でメダルに困ることはないだろう?」

 しかしセルメダル自体は小出ししてきている時点で、アンクに対する縄はしっかり付けるつもりのようだ。
 何かで浪費したらその都度渡すつもりだろう。

「じゃあ早速……」

 これは使ってみせるのが最も手っ取り早い説明になる。
 映司はカートのメダルを数枚手にとって自販機に入れ、幾つかカンドロイドを取り出す。
 そして缶のプルトップのタブを引っ張ると、缶は瞬時に変形しタカの形やバッタの形となった。

「響ちゃんを探してきて」

 命令を聞いたカンドロイド達はブリーフィングルームを飛び出していった。
 まさか自動販売機から出た缶が、変形して自動で動くなど考えもしなかった二課のスタッフ達は、驚きのあまりポカンと口を開けている。
 驚きで言うなら映司達もノイズやシンフォギア、そして学園に地下にあるこの場で散々味わっているのでおあいこではあるのだが。

「今の命令だけで自動判断するのか。大したものだな」

「それに、どうして立花を?」

 翼は映司の出した命令に首を傾げた。
 試しに使ってみたのもあるが、当然ながらただ無為にメダルを消耗したわけではない。

「一度、響ちゃんと話をしてみたいんだ」

「それは無意味です。無理に見つけて話をしようとも、彼女はこちらを拒絶するだけ。まとな会話にもなりません」

 当然、二課が貴重な装者をただ放っておいただけではないことを、映司は理解している。
 それでも、これから共に戦う仲間としてきちんと話をしておきたいと思った。

「さっき翼ちゃんは響ちゃんのこと、ただ暴れているだけだって言ったけど、そんなことないと思うよ」

「しかし、現に立花は二課との交流も避けて、一人でノイズと敵対して暴れています」

「それは響ちゃんなりの理由があるんじゃないかな」

 何故なら響はノイズに襲われようとしている人を助けに入った。それも恐らくは間に合わない距離の人を救うために駆けつけようとしていたのだ。
 ただ戦うことだけが目的の者が取る行動とは思えなかった。

「あの風鳴司令。俺、自分でも探してきたいんですけど、いいですか?」

 普通ならいきなりの申し出に面食らい、渋い顔をするだろう。

「っふ……構わんよ。丁度君達のIDカードも用意できた頃だ。出入りの方法を説明するついでに外へ案内しよう」

「ありがとうございます!」

 しかしそこは風鳴弦十郎。他者を突き放す響に対しても、好意的に付き合おうとする青年を、大人として高く評価した。

「おい、そんなことより他にやることはいくらでもあるだろう!」

 そしてそんな人情味のある展開を好まないのがアンクというグリードだ。

「そうだね。けど、今日の分のアイスも買いにいかなきゃだろ?」

「っち……だったら昨日の分も買ってこい」

 それは確かにやることの一つだったと思わず納得してしまったアンクは、己の欲望を否定せず、悔し紛れに出会った日の分も要求するのだった。


今回は現状の説明回でした。
話のわかるOTONAがいると平行世界でも協調展開させやすい