戦姫絶唱シンフォギア × 仮面ライダーオーズ クロスオーバーSS(二次創作小説)
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シンフォギアXDの『陰り裂く閃光』があまりに傑作過ぎたので、衝動的にグレビッキーのキャラを掘り下げたくなったのデース!
っていうかグレビッキーのデザイン滅茶苦茶カッコイイのデース!
世界はどこまでも残酷だ。
ツヴァイウィングのライブ会場で大量のノイズが現れ、多くの悲劇を生んだあの日。
立花響は瀕死の重症を負い、それでも何とか命を繋いで家に戻ったけれど、そこに待っていたのは安息の日常ではなかった。
マスコミが響を叩いた。
クラスメイトが響を虐めた。
誰かもわからない人達が響と家族を責め苛んだ。
彼女と家族以外の全てが、彼女達を悪人として貶めたのだ。
家に帰るまでは怪我との戦いだと思っていたのに、本当の敵は響がいる世界そのものだった。
――どうして? わたしはただ一生懸命に生きただけなのに。
彼女は心の中で何度も問うた。
そして、その度にあの言葉を思い出す。
『生きることを諦めるな』
惨劇と化したライブ会場で、響を救った人物が投げかけた言葉。
強く優しい人。
歌姫の片翼。
――それに応えた先に待っていたものは、ただの地獄だったよ。
天羽奏はあの日、響という初対面の少女を庇って命を落とした。
それは尊い自己犠牲で、英雄的行為だったろう。
けれども、今の響はこう思わずにはいられない。
あの日に死んでいれば、わたしはこんな目に遭わず済んだのに。
何故わたしを助けたの?
何故あなたが死んだの?
生き残ったのがあの人だったなら、きっと世間は生還を祝福したはずなのに。
皆がそうなるべきだったと言っている。
最も頼るべき父親ですら、娘の響と家族を見捨てて逃げた。
世間がこうなっては、残された家族にも碌な働き口なんてない。
その後にリディアンへ入学したのは、驚く程の学費の安さと響が寮生活になれば家への嫌がらせが止むと思ったからだ。
結局、世間のニュースがあの日のライブとノイズ被害から離れて風化していくにつれて、立花家への攻撃も次第に減っていった。
家はもう、平穏を取り戻しているという。
それでも、響は家に帰ろうとは思えなかった。
もし戻ったら、燻っている火種がまた再燃するかもしれない。
そうしたらまた、何の罪もない家族を苦しめることになる。
実際の可能性が低くとも、『かもしれない』と思ってしまったらもう動けなかった。
それだけ、響が負った心の傷は深い。
家族を想い、家族からも離れて、立花響は一人になった。
独りになるしかなかった。
本当に辛い時、誰も響を助けてくれない。
差し伸べてくれる手も、ぬくもりもなかった。
響は独りぼっちで冷たい闇の中。
心は冷え切って何も感じることもなくなった。
それでいい。
そうすればもう凍えなくて済むから。
突き刺すような胸の痛みも慣れてしまえばいい。
誰も信じない。
誰にも頼らない。
だから響は、今も夜闇を一人で駆け抜ける。
けたたましい警報が報せる場所に辿り着くと、そこにはいつも通りにやつらがいた。
人類の敵、ノイズ。
人を襲い炭に変える災害。
それらが群れをなして闊歩している。
あの異形達を見ると怒りが胸に渦巻いて、けれど響の口元は釣り上がり笑みを作る。
獣が牙を剥くような笑顔だ。
これ以外の笑い方は忘れてしまった。
この世界に神様なんているとは思えないから、きっとこれは悪魔の仕業だろう。
悪魔は響から全てを奪って、けれど一つだけ寄越した物がある。
『Balwisyall Nescell gungnir tron』
胸の中から湧き上がる言葉を紡いで響は詠う。
そうすると彼女の衣服が特殊な戦闘スーツと武装へと変化した。
その名はシンフォギア。そしてガングニール。
響を救った彼女から引き継いだ力。
別に望んで得た力ではないけれど、これのおかげでずっとやり場の無かった怒りのぶつけどころが見つけられた。
それだけは感謝している。
アーマーを纏うと、心の内から歌詞が浮かんでくる。
一番近くにいたノイズに拳を叩き込みながら、響は歌う。
「―――――――!」
胸の痛みを吐き出すような重々しく烈しい歌。
自分の中にこれ程の破壊衝動があったなんて、歌ってみるまで知らなかった。
殴りつけたノイズは瞬時に灰へと還る。
もっとだ。もっと倒す。壊す。
湧き上がる衝動を手当たり次第ぶつける。
ぶつける。
ぶつける。
ぶつける。
ぶつける!
この腕は壊すためにある。
全てのノイズを。
全ての雑音を。
――わたしがこの手で破壊してやる!
これは、自分の世界を壊したノイズ達へ復讐だ。
周辺を見回すと、最近現れるようになった黒いノイズの姿が、今日はないようだった。
代わりに視界の端にノイズ以外の何者かが映る。
怯え立ちすくむ若い女性。逃げ遅れた一般市民だろう。
「っち」
響にとっては関係のない人間だ。
しかし瞬時に彼女が助けられない位置だと察すると、自然に舌打ちをしていて、無理だとわかっているのにそっちへと走り出していた。
視界の映る範囲に邪魔者がいると、ノイズを壊すのに集中できないから。
心の中でそう理由付けた。
けど彼女の目測は正しかったようで、やはり駆けつけるより先に、人型のノイズが女性へ襲いかかる。
関節を失ったような柔軟さで腕が伸びた。
あれに人間が触れれば一瞬で炭化する。
――クソッ!
純粋な怒りとは違う感情が響の中に生じる。
ノイズの手が触れる寸前に、響ではない誰かが女性を押し倒すように庇い身を伏せた。
そのおかげで女性は死なずに済み、追いついた響がノイズの顔に一撃を叩き込んで逆に炭化させる。
「大丈夫ですか? ここは危険です。早く逃げて!」
彼女を庇ったのは見知らぬ男だった。異国情緒溢れる変な服を着ているが、顔立ちや黒髪から日本人だとわかる。
危機一発生き残った男は、自分の身より彼女を優先して逃げるように促す。
「あっ……あう……でも、足が震えて」
「それでも走って! 生きることを諦めちゃ駄目だ!」
「はっ……はい……!」
怯えていただけの女性は、それで火が点いたように走り出した。
不思議な安堵感と共に嫌な思い出が湧き上がる。
あの人を思い出す言葉。
「あんたもさっさと逃げれば?」
「それはできないね。まだ君がいるから」
「は?」
響がノイズを倒している姿を、この男は見ていたはずだった。
むしろ一般人がいるなんて足手まとい以外にならない。
「……邪魔」
「なら邪魔にならないように頑張るからさ」
わざわざ冷たい視線を投げかけて言ったのに、男は爽やかな笑顔で返してきた。
こんな危険な場所で自然にできる表情ではないのに、まるでこういう鉄火場に慣れているようだ。
「アンク、忠告無視して悪いんだけど、やっぱり俺戦うよ」
「どこの世界でもお人好しだな、お前は」
アンクという名前に反応して、少し離れた位置にいる男が反応した。
髪を金に染めていて、こっちの男と違いガラの悪い雰囲気だ。特に奇異なのは右手が赤い異形に変異している。
――あの男は、確か前にも……。
「どこの世界も楽して助からないのは一緒、だろ?」
「ふん。まあいい、調律者がきたのなら多少話は変わってくる」
黒髪の男が変なベルトみたいな物を腰に装着すると、金髪の男が小さなメダルを彼に投げ渡す。
メダルは赤と黄色と緑の三枚で、それぞれベルトの空いている穴に嵌められる。そして円形の装置を翳すと小気味良い音が鳴った。
『タカ! トラ! バッタ! タ・ト・バ! タトバ! タ・ト・バ!!』
恐らくあれは何かしらのスキャニングマシーンなのだろう。ベルトから聞いたことのない音声が鳴り響く。
それに合わせて黒髪の男が全身アーマーを装着した。
「この歌は……」
歌と共に行われた、シンフォギアと少しだけ似た変身の仕方。
けれども現れた姿は明らかに別系統で、見たこともないデザインの戦士だった。
頭部は赤、胸から腰にかけては黄色。そしてそれより下は緑。
腰に嵌めたメダルと同じ色だ。
「歌は気にするな」
金髪の男が響へと投げかけた。
それはお前達とは違うという意味なのか、それともそのままなのかはわからない。
ともかく、この男達は本気でノイズと戦う気だ。
「いけ、映司! 調律者の歌で、奴らの体はこっちの世界に引き寄せられている。今なら半減されるオーズの攻撃も通るはずだ」
「わかった!」
アーマーを纏った男が構えると、手の甲から生えている鋭い爪が伸びて、近くのノイズを切り裂き炭化させた。
「よし、ちゃんと効いてる」
ノイズも反撃するが容易く躱して、次々と標的を変えて倒していく。明らかに戦い慣れている熟練の動きだ。
あのアーマーもシンフォギアと同じく超人的な力を装着者へと与えるらしい。
「…………ふん」
その戦闘力に一瞬目を奪われたが、こちらには関係のないこと。邪魔にならないのならばそれでいい。
そう判断して響も戦闘を続行する。
男が何をしようとも、ノイズは自分が倒す。
葡萄のような形状をしたノイズが放つ球を避けて、胴体を蹴り飛ばす。
そのデカい図体が他のノイズ達を巻き込んで倒れた隙を狙い、跳びかかる。
「潰れろっ!」
右腕のパーツを左手で後方に引き絞り、反動のエネルギー噴射で加速。
打撃と生じた衝撃波でノイズ達をまとめて爆砕させる。
「すごいな……」
こっちに視線を向けていたアーマー姿の男がそう呟いた。
響の装着するガングニールは、固有の兵装アームドギアを持たない。
だけどこの拳がある。握りしめて叩き付け、打ち砕く。
――全てを破すための拳だ!
「ならこっちも一気に!」
男が新たに手にしたのは剣。
それも一太刀でノイズを切り裂くだけの破壊力があった。
その柄にメダルを装填する。腰につけているのとは違う、銀のメダルだ。
『トリプル・スキャニングチャージ!』
「セイヤァ――――!」
そこに変身の時に使ったスキャナーを剣へ当てて、横に一閃。
空間ごと断つような歪みが発生したかと思うと、激しい爆発が起きて残っていたノイズ達が一掃された。
「ふん、オーズの力を舐めるな、雑音共」
金髪の男が自慢げに口角を上げて、風に吹かれ散っていく炭にそう言った。
「オーズ……」
さっきも金髪の男が呼んでいたその名を、響は反芻するように呟いた。
シンフォギアとは別の、けれどノイズにも対抗可能な新たな力。
いつもの痛みとは違う、よくわからないざわめきが彼女の胸の中で疼いていた。
事実上のプロローグ。
XD未プレイ人向けなグレビッキーのグレ具合を説明。
しつつの奏者相手に『歌は気にするな』を最初にねじこみたかったので、結果こうなったワケダ。
モチベーションアップのために作品評価をお願いします!(切実)
仮面ライダー感想・考察ブログも書いています。
小説と同じくらい力を入れていますので、よければ読んでください!
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