仮面ライダー × FGO クロスオーバーSS(二次創作小説)

[作品トップ&目次]

ここはまだ、旅の途中

「だいたいわかった」

 魔獣を全滅させて、自分の置かれた状況を改めて説明された士は開口一番にそう言った。
 本当に理解できているのか、周囲の者達からすれば少々怪しいものではある。

「先輩、この状況はかなり不可解であると判断します」

 通信を介しての会話を除いた今現場にいるメンバーで、一番魔術関連について詳しいマシュが疑問をなげかけた。

「霊基グラフに存在しない士さんが現界したこと?」

「それもありますが、聖杯から喚ばれたサーヴァントであるなら、マスターの知識は共有して召喚されるはずです」

「それは確かにそうだね」

 腕を組みうむうむ、と何度か頷き立花は同意した。

「それに門矢さんは現状どころか聖杯戦争の知識すらほとんど有していません」

 以前聖杯から不安定な霊基で召喚されていたジャンヌ・ダルクも聖杯戦争についての記憶は有していた。

『おそらく彼は聖杯や世界のカウンター役とは別の手段でここへ喚ばれたのだろう』

「聖杯や抑止力の他にも召喚される手段があるんですか?」

 ホームズの解説に立香が質問を返した。
 魔術の知識は深くない彼も、これまでの旅で召喚以外にサーヴァントが召喚されるケースには慣れている。
 しかし、この事象はそれらのいずれとも該当しないケースだった。

「そもそもそのカウンターってのはなんだ」

『よろしい、士君は当事者だからね。簡単に解説しよう』

 サーヴァントが召喚される条件はいくつかある。

 一つ目は聖杯を通じてマスターが召喚する方法。
 本来なら今回はこの方法でサーヴァントが召喚されるはずだった。

 二つ目は聖杯が不正な手段で扱われた時などにイレギュラーを修正するために、問題解決のカウンター役として召喚される。
 立香が戦った世界焼却においても、この手段で多くのサーヴァントが召喚されていた。

 最後の三つ目、それは世界が危機的状況に陥った時に、その要因を排除するための抑止力が喚び出される。
 これは二つ目に近いが、聖杯ではなく世界そのものが召喚するため事象としては別物だ。

『私は当初、士君は三つ目の抑止力として世界が最後の抵抗を試みたのだと考えたのだがね』

『それだと説明の付かないことがあるのさ。彼の霊其は通常と構成パターンが異なっている。マシュのような擬似サーヴァントとも違う。意外かもしれないけれど藤丸君が一番近い』

 イレギュラーケースの士を解析していたのだろう、ダヴィンチが告げた。

「俺ですか?」

 立香は本当に意外そうな表情で自分を指差している。

『正確に言うとレイシフトしていた頃だね』

「レイシフト……でもあれはカルデアだけが使えるシステムだったよね?」

『全く同じではなく近いんだ。門矢君の存在は本来この世界にはない。しかし何かしらの方法で彼はこの世界に存在が証明されている』

「えー、と言いますと?」

「なんだ、そんなことか」

 頭をひねる立花に対して、士は首に下げているトイカメラのシャッターを切った。

「それならいつものことだ。気にしなくていい」

『こっちとしては非常に気になるんだけど……。それともう一つ。君はレイシフト状態でありながら、同時にサーヴァントとしての肉体を有している。問題はむしろこっちだね』

「俺はサーヴァントとやらになった憶えはない」

 こちらについては士も思い当たる節はないらしい。
 しかし別段慌てた様子もなかった。

『そうは言ってもねえ。あ、ちなみにクラスはライダーだよ』

 もし、サーヴァントになっていなければ、士は今頃極寒の地で凍え死んでいただろう。

「流石仮面ライダー!」

「フォウフォーウ!」

 立香は目をキラキラとさせて、それに反応するようにマシュの腕に収まっていたフォウが鳴いた。

「俺をここへ来させたのは鳴滝という男だ。あいつは平行世界を繋げる能力を持っている」

「平行世界ですか……ここが特異点の一種だと考えれば並行世界を渡る能力は有効だと思われます」

『ふざけとるの? 個人でそんなものを保有しているなぞ、もはや魔法の領域ではないかね!』

 魔術師の家系であるゴルドルフは納得がいかないらしい。
 それはそうだ。本来異聞帯への侵入は簡単な話ではない。
 シャドウボーダーも虚数潜航がなければこの地帯へは入れなかった。

「しかし、現実として士さんは今現在ここにおられます。その事実は変えようがありません」

『門矢君、そのMr.鳴滝との接触は可能かな?』

「どうだろうな。ま、あいつはいつも唐突に現れる。旅を続けていればそのうち会えるだろ。それより大事なのはこれからどうするか、だ」

「これから、どうするか……」

『我々としては門矢君に藤丸君と契約を依頼したいな』

 元々はクリプターと戦うため、戦力を得るための召喚だった。
 しかもチャンスは一回こっきり。やり直しはもう効かない。
 次に召喚できるタイミングがあるかどうかさえ怪しいものだ。

「断る。俺はまだお前達のことを完全に信じたわけじゃない」

『なんだと! 形式はどうあれ貴様はサーヴァントとしてここへ召喚されたのだ。使い魔となって我々に仕えるのが当然ではないかね』

『まあ落ち付いてください新所長。彼からすれば、この反応こそ当然と言えるでしょう。それに彼は召喚方式が違うから今でも霊基は安定している。契約が必須というわけではない』

 よくわからないままここに召喚されて、いきなり使い魔と主人として主従関係を結ぶため契約をしろと言われているのだ。
 たとえそれが必要なことだと言われても、自分が何かしら騙されている可能性だってある。

「それなら、契約はしなくていいんじゃないかな。無理にさせるものでもないと思うし」

『けれどサーヴァントである以上、マスターなしで戦い続けるのには色々と制約がある。最悪、魔力が底をついて消滅もあり得るよ』

「マスター、士さんの意思はわたしも尊重すべきだと思いますが、ダ・ヴィンチちゃんの説明も事実です」

 戦力が他にもいるなら、誰と契約をするかしなかは選択肢がある。
 しかし今いる戦力は士を除いて不調のマシュのみ。
 戦況の悪さも考慮すれば、契約の必要性は考えるまでもない。

「うん、わかってる」

 立花はマシュに頷いてから士へと向き直る。

「士さん。俺は、これまで色んな時代を旅してきたんだ」

 時間に置き換えれば数年程度。
 けれど、その中には数え切れないくらいの想い出が詰まっている。

「それは歴史を守るため、未来を守るための戦いだった。とにかく大変だったよ。つらくて、恐くて、痛くて。俺は皆に助けてもらいながら、ただ必死に、自分のできることを精一杯やってきた」

 いくつもの世界があった。
 いくつもの出会いがあった。
 いくつもの別れがあった。

「だけど……」

 立香は静かに目を閉じた。
 考え事をするというよりは、何か大切なことを思い出すように。

「だけど、楽しかった。楽しかったんだ」

 旅の先で出会った皆は、どれだけ絶望的な状況でも決して諦めず、そしてある人は力強く、ある人は優しく、ある人は心から楽しそうに笑っていた。
 たくさんの話を、たくさんの英霊サーヴァント達と交わしてきた。
 だから楽しかった。

「旅の先で出会って、一緒に戦ってくれた英霊なかま達。最初は敵でも、今はとても心強く感じる反英霊なかまもいる」

 今だって皆の顔を思い出せば、折れそうになる心を支えてくれる。

「皆と笑って泣いて繋いできた旅だった。そうしてようやく辿り着いた未来。それを俺はこんなところで、世界を真っ白にされたくらいで終わらせたくない」

 世界焼却を防いだ旅は、元々正しい歴史には残っていない。
 全ては泡沫の夢のように消えていく。
 それでも、自分は憶えている。
 マシュも覚えている。
 カルデアのスタッフ達も。

 誰が否定しても、誰に漂白されても、それらは決して消え去ることはない。

「俺は一人じゃ弱くて戦えない。それでも、まだきっと俺にもできることはあると思う。それを全力でやりきりたい」

 全力で走り出したい。
 そのために漂白された世界と極寒の地を、諦めずに歩き続けてきた。

「それにさ、俺、ここで出会えた士さんとも旅がしてみたいんだ」

 旅とは出会いと別れ。
 士の召喚は新たなる出会いだ。
 だから、この縁を大事にしたい。

 それもまた、藤丸立香の偽らざる本心だった。

「だから、俺達と一緒に戦ってくれないかな」

「先輩……」

 立香は目を開いて、右手を士へと差し出す。
 マシュはその様子を見て、自然と穏やかな微笑みを浮かべていた。

「旅か……」

 ふっと士は口角を上げる。そしてしっかりと立香の手を握った。

「いいだろう。付き合ってやる。俺は旅する仮面ライダーだからな」

「旅する仮面ライダー……うん、ありがとう!」

 硬く握りあった手は、刻まれた令呪による契約はなされていない。
 けれどそれは間違いなく一つの契約だった。

「士さんも旅をされてきたのですね?」

 確認するようにマシュが問うた。
 彼も人々を守る仮面ライダーとして様々な世界を旅してきたのだろうか。

「ああ、いくつもの世界を通りすがってきた。次はここだ」

「はい。わたし、マシュ・キリエライトもよろしくお願いいたします!」

「フォフォーウ!」

「こちらはフォウさんです!」

「ああ、よろしく頼まれてやる」

 マシュは改めての自己紹介と、そして反応するように鳴いたフォウも抱き上げて主張した。

『うんうん。一先ず協力関係は結べたね。サーヴァントの契約はこちらを信じてもらえてから追々かな』

「そういうことになるな」

 今はそれでいい。
 一緒に旅してお互いをもっと知り合って、本当に仲間になれたのなら、その時は改めて契約をお願いしよう。立香はそう決めていた。

「話はまとまったか。ならここから出ようぜ」

 これまで空気を読んで大人しくしていたパツシィが提案してきた。
 どうやらまた魔物が入り込んで来ないか見張っていたようだ。
 あるいは、士に倒されかけた恐怖から、誤解が解けても少し近寄りがたいのかもしれない。

「一緒に旅をするのはいいが、次はどこへ向かうつもりだ」

『次なる目的地は既に決まっている』

 特別顧問役の名探偵が、進むべき先を告げる。

『この世界の王……イヴァン雷帝の圧政を押しのけようとする有志達の集い、反乱軍の隠れ家さ』

前のページ     次のページ

[作品トップ&目次]