仮面ライダー × FGO クロスオーバーSS(二次創作小説)

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 ヤガとは人類の延長線上に在る。
 地球規模の極端な寒冷化から生き残るため、魔術によって人間と魔獣を合成した人工的な種族だ。

 それを進化と呼ぶべきなのかどうかは解釈の分かれるところだろう。
 ただ言えることは、彼らヤガ達はヒトのままでは生きられなかった極寒の環境に適応した。
 ヤガにならねば旧種ヒトが絶滅していたのは確かなことだ。

 されど適応には代償もあった。
 ヤガの生命維持には人間時代に比べて膨大なカロリー摂取を必要とする。
 肉体を強化する程に維持も難しくなっていくのは自然の摂理だ。

 そんなただでさえ過酷な環境にも関わらず、イヴァン雷帝はそんなヤガ達に重税をかけて、非情にも日々の糧を奪っていく。
 逆らう者は殺戮猟兵オプリチニキに容赦なく粛正される。それは即ち死だ。

 しかし、そんな皇帝ツァーリに反旗を翻す者達も現れていた。
 彼らは大別すると二種に分けられる。

 一つは叛逆者達。イヴァン雷帝を打倒さんと目論む者達の集まりだ。
 現在最も有力な叛逆軍は、ヤガよりも強靭な種族アマゾンがリーダーを務めており、藤丸立香達カルデアもそこへ加入している。
 けれどメンバーには幼い子供や老人も少なくない。イヴァン雷帝の搾取に耐えかねた者達の逃げ場という意味合いも強く、悪く言えば寄せ集めだ。
 実情はどうあれ、それでもまともな組織として成り立っているだけマシだろう。

 もう一つが盗賊である。
 彼らは雷帝ではなく、自分達よりも弱い者から奪取することを選んだ。

 この世界には主要となる町や都市の他に、いくつもの村が存在している。
 首都から離れる程に、その規模も縮小化していく。
 生活様式も原始的に戻り、住民も年老いた者の割合が増えるのは想像に難くない。

 そこに、武器を携えた盗賊は襲撃をかけるのだ。
 盗賊は数と武器を揃え、勝てるとわかった村にしか襲撃しない。
 それも村を焼いて、村人達は可能な限り根絶やしにする。その上で奪う。

 そのため村は防衛にも回ろうにも、時間をかけて籠城する村ごと蹂躙される。
 今もまた、ある村が盗賊団の襲撃に遭っていた。

「っち、死にたくなければさっさと金と食料を出せってんだ!」

 盗賊達が襲撃をかけたのは昨日だ。
 最初は武器を見せつけながら襲撃をかけて、脅しをかけた。
 力の差に恐怖を感じて、村側が貯蔵している食糧を差し出すのなら、彼らもそれに越したことはない。
 戦えば盗賊団達にも怪我人や死者は出る。

 いや、怪我人なら既に多く出ていた。
 前の村での襲撃時に激しく抵抗されたためだ。
 それで結局、薬や食料が足りなくなって次の村を襲う必要が出た。

「昨日も伝えただろう。それはできない……諦めて帰ってくれ」

 しかし、村長のヤガははっきりと断って、脅しは失敗に終わった。
 盗賊が奪えるのはせいぜいが貧しい村程度。
 村側も盗賊達に食料を差し出してしまうと、自分達の糧がなくなり壊滅する。

 これは村長のヤガにとっても苦しい決断だった。
 圧倒的な力の差があり、戦えば必ず負けるとわかりきっていれば降参もしただろう。

 相手は盗賊といえども怪我をした雑兵の集まりに過ぎない。
 抵抗すれば退けられるかもしれない相手。村の壊滅よりはと抵抗を選んだ。
 どちらにせよ、犠牲が多く出ることだけは間違いない。

「だったら、食料と金以外は燃やしちまえ!」

 村人達は柵で囲って籠城しているため、そこに再び襲撃をかけている最中だった。
 相手が抵抗するなら、もはや抵抗されないよう皆殺しにして奪うしかない。

「おい、なんだお前? ヤガなのか?」

 その時、盗賊の一人から声が上がった。
 まさか背後からの襲撃か?

 しかし、村長も何事かと驚きの表情を作っている。
 少なくとも村の側すら想定していない事態らしい。

「何しにきた。答えろ!」

 ボロボロのローブを纏った何者かが、ただ無造作に立っていた。
 標準的なヤガと比べて小柄で、顔はローブに隠れてはっきりとは見えない。
 ローブから僅かに見える手は獣毛がなく、つるりとした地肌が露になっている。

「お前達は、何くだらないことをしている」

 その者は問いかけには答えず、盗賊達へとそう返した。
 呆れたような、冷え切った声色だ。

「ふざけるな、コイツもやっちまえ!」

「さっさと死ねえ!」

 リーダー格の言葉に従うように、盗賊の一匹が斧を手に襲いかかった。
 ローブの者は腰に手を当て何かを操作しながら一言つぶやく。

「変身」

 すると、その者は異形へと姿を変えた。
 戦士が装備する鎧のような、けれど見たことのない形状。そして仮面。

 仮面の者は振り下ろされた斧を、ヤガの腕を掴むことで止めた。
 片腕を捕られたヤガはジタバタと暴れるが、仮面の者はまるで微動だにせず、その異様な光景に場が静まり返る。

「腕が、動かねえ。は、離せ……おげえ!」

 仮面の者が腕を離すと同時に、胴体へ拳をめり込ませた。
 ヤガの体はふわりと宙に浮き、重力に引かれるようそのまま崩れ落ちた。
 声にならない呻き声を上げて、血と吐しゃ物を雪の上にまき散らしている。

 仮面の者は蹲るヤガを無視して周囲の盗賊達を見回した。
 その表情は仮面に隠され窺い知れない。
 しかし盗賊達には仮面越しでもはっきりと強烈な殺気が伝わってくる。

 盗賊達が、いや、その場にいる全てのヤガが恐怖で固まっていた。
 盗賊のリーダー格が、辛うじてライフルを仮面の者へと向けている。

「お、おい! テメエら、止まってんじゃねえ! 全員で一気にい……くそ、来るなあ!」

 仮面の者は真っすぐにリーダー格のヤガへと歩みだす。
 狙撃するチャンスのはずが、ガタガタと震えてライフルは狙いなんてろくに付いていない。

「な、何なんだよテメエ!」

 その叫びはもはや悲鳴だった。
 仮面の者の腕がリーダー格へと伸びて、ライフルを掴んだ。
 その握力で銃身が歪にへしゃげ、誰の目からももう使い物にならないとわかった。

「ひいいいいいい!」

「ふざけんな! こんなの無理だ!」

「逃げろおおおおお!」

 腰を抜かしたリーダー格がその場に尻餅を付くと、盗賊達は散り散りになって走り出す。
 リーダー格も這う這うの体で逃げていった。
 仮面の者は、それを眺めているだけで、追ってとどめを刺そうとはしない。

 周囲に敵がいなくなると、仮面の者はベルトを触り別の姿へと変わる。
 そうして怪我をした村人達の治療を始めた。
 次々と礼を述べるヤガ達に言葉も返さず、黙々と。

 それも一通り終えると、異形化を解除して元の姿へと戻る。
 放浪者のようなボロボロの姿に、大きなベルトだけがヤガ達の目を引いた。

「ありがとうございました! こちら少ないですがお礼を……」

 寡黙なまま仮面の者が村から立ち去ろうとすると、村長は慌てて声をかけた。
 村は貧しくとも、救援に現れたった一人で盗賊達を追い払い、村人達への治療まで行ってくれたのだ。
 このまま帰すわけにはいかないと、短時間でかき集めた食料を渡そうとする。

「必要ない」

 だが、仮面の者はそれもヒトの手で押し返す。
 言葉と行動は端的でも、その動作はやんわりとしていて、どこか優しげにも感じた。

「ならばせめて、あなたのお名前を教えていただけますか?」

「……カルデアの者」

「カルデア……?」

 そっけなくぽつりと告げて、その場を去る。
 村長が言葉の意味を測りかねている内にその後ろ姿は小さくなっていき、足跡はすぐに吹雪が白一色に塗り潰す。

 さほど時間もかけずカルデアの者は村人達の視界から消えた。
 残るのは見送る彼らの記憶の中だけだ。

 しかし、村を救った者は確かに存在する。
 今、この瞬間も吹雪の中を独りで歩き続けていく。

 吹きすさぶ風の中でぼろ布同然のマントがなびいて、視界も悪い。
 しかしその先にうっすらと人影が見えた。
 そこへ近付いていけば、やがて誰かははっきりと視認できる。
 眼鏡をかけたコート姿の男と、彼の背後にあるオーロラの歪みもだ。

「ベルトの力はどうだったかね?」

「問題ない」

 鳴滝の言葉に返された言葉は、極寒の地と同じく凍てついた声色だった。

「盗賊や道中のクリチャーチ、それと辺境の殺戮猟兵オプリチニチ程度では肩慣らしにもならなかったかな。いっそジャヴォル・トローンでも出てくればもう少し試せることがあったかもしれないが、あれは他と比べて個体数が少ない」

 返事はない。けれど鳴滝は気にした風もなく、そのまま一方的に話を続ける。

「次の世界ではもっと手応えのある者もいるだろう」

 やはり回答はなく、そのまま鳴滝を通りすぎて後ろのオーロラへと消えていった。
 去った後の風景を見つめている鳴滝の背後から、また別の声がかかられる。

「これぞまさしく、通りすがりの仮面ライダーでは?」

「その名は、今となってはディケイドだけのものだよウォズ君」

 鳴滝とやや近い色合いの衣服に黒いマフラー。そして手に預言書を携えた男は、シニカルな笑みを彼へと向けている。

「ディケイド……我が魔王最大の障害が、まさかこのような形で王道を拓き直す手助けをしてくれるとは。予想外ではありました」

 このような形とは、藤丸立香と合流して戦っている現在のことを指していた。

「我が魔王、か。君には君のやるべきことがあるだろう。『カルデアの者』については間接的であれ関わっているはずだ」

「わかっていますよ。全ては、我が魔王のために」

 ウォズは恭しく頭を下げて礼をする。
 されど、それが鳴滝に向けられた敬意でないのは明らかだった。

「それにしても、なぜ『カルデアの者』などと名乗っているのやら」

「そう名乗るしかないのだ。真名と、かつて呼ばれた名も捨て去って、残ったものは『カルデアの者』だけだった」

 一部始終を知る鳴滝には『カルデアの者』が抱える気持ちが痛いほどよくわかる。
 その名が抱える贖罪と祈りを。

「それに、その名を否定できる者は誰一人としておるまいさ。たとえシャドウ・ボーダーの彼らでも」

「なるほど。ならば『カルデアの者』の祈りが現実になるよう、私も助力しましょう」

 新たなオーロラが生まれて、作り出したのは鳴滝の力だが、その中へと入っていくのはウォズだった。

「その先に2019年へ続く歴史が再び開かれる!」

 最後にそう言い残して。
 そして、今度こそ鳴滝は一人になった。

「白紙化された歴史に現れた2068年からの使者か……。黒きウォズ君、君はこの戦いの果てに、自分の未来が異聞帯ロストベルトではないと断言できるかな?」

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