仮面ライダー × FGO クロスオーバーSS(二次創作小説)

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 今、廃墟の村で、四人の仮面ライダーが二つの陣営に分かれて争っている。

 一人は仮面ライダーディケイド。彼はカルデアから持ち出した簡易の召喚システムで現界した。

 残りの三名は人類史が消えるという危機に応え、世界がカウンターとして呼んだサーヴァントだ。
 聖杯もない地で、よくそんな魔力があったものだとホームズは疑問を感じていた。

 否、聖杯が『ない』と前提に考えていること自体かナンセンスではないか。
 仮面ライダーはいずれもサーヴァントでもある。
 ならば聖杯に該当する何かが、この世界にはあってしかるべきだ。
 そしてこの仮説が正しければ、他の仮面ライダーがこの地に降り立っている可能性もある。

 これ以上は現在考えるべき事柄ではないな。とホームズは思考を打ち切った。
 目下の問題は今この場をいかに切り抜け次の段階へ繋げるかだ。

「今度はバロンか」

 士は新たに現れたライダーも既知であるらしい。
 ならば話が通じるかもしれないと悠は和平の意思を伝えようとする。

「僕達はあなた方から連絡を受け取って話し合いに来ました。武器を収めてはくれませんか?」

「ふん、だからどうした」

 バロンもまた海東と同じく、対話の意思をまるで見せず臨戦態勢を取っている。
 彼の後続にはヤガ達がそれぞれ銃を持って現れた。

「このロシアでは強者こそが絶対のルール! 俺に貴様達の強さを証明してみせろ!」

「……なるほど」

 バロンの言葉から何かを察したように、アマゾンオメガもまた構えた。

「了解しました。お相手します」

「悠さん、どうして?」

「ここは僕を信じて付き合ってください」

「大体わかった。そいつは任せるぞ、悠」

 士も同意して、改めてディエンドと向き合う。
 この戦いはもう避けられない。ならば仲間である彼を信じて戦うと立香も決意を固めて頷く。

「了解! やろう、二人とも」

「魔術師を含め向こうは三人だ。こちらもバランスを取ろう」

 ディエンドはまたディエンドライバーに新たなカードを使う装填してトリガーを引く。

『KAMEN RIDE BEAST!!』

 ディケイドやディエンドと同じく像を結ぶように現れたのは、黄金のたてがみを模した頭部と緑の眼。名前通りビーストのようなライダーだった。

『新たな仮面ライダーの現界を確認しました……! あの仮面ライダー特有の召喚機構でしょうか』

『サーヴァントがサーヴァントを召喚した? それもあの銃一つで? 一体どういう構造してるの!?』

 士を召喚したトランクはダ・ヴィンチは、サーヴァントの召喚システムを他に類がないほど簡略し小型化したものだという自負があった。
 まさか数日でそれがひっくり返されるとか思うわけもない。

「これが海東……ディエンドの能力だ。お前らで言うところのシャドウサーヴァントみたいなもんだと思えばいい」

「士さんも同じような力を?」

 あれがディエンドのスキルだとするのなら、ディケイドと同種らしきディケイドも何か同じような力を扱えるのだろうか?
 けれど士は首を横に振る。

「君達、僕を相手にしておしゃべりとは余裕だね? いけ」

 ディエンドの命令を受けて、意思なきビーストがディケイドへと襲いかかる。
 ディケイドはそれを迎え撃つように駆け出した。

 一方、アマゾンオメガとバロンとにらみ合いになっている。
 互いに仮面ライダーでありながらヤガを統べる者であもある。リーダー同士の対決だ。

 三対三と言ったのは事実のようで、バロンが引き連れてきたヤガ達はその場から動かず観戦に徹するらしい。

「来ないのか? ならばこちらから行くぞ! はっ!」

 バロンは積極的に攻め込んでくる。
 ランスの分だけ、こちらは間合いが遠い。
 身を捻ってランスを避けて、アマゾンズドライバーのグリップに手をかける。

『Violent Break!』

 機械音と共にグリップを引き抜くと細身の槍、アマゾンスピアが生成される。

「俺に槍で挑むか。面白い、やってみせろ!」

「せぁっ!」

 金属同士がぶつかり合う甲高い音を立てて、二人の戦いが始まった。

「くそ、わかっていたが、二人同時は厄介だな」

 ディケイド側の戦いは、明らかに優劣が付いていた。
 ディエンドが後方から射撃。
 それを避けて次を警戒していると、前衛のビーストが細身のサーベルを武器に力強く踏み込んでくる。

「ぐあっ」

 刺突を受けてディケイドがよろめくと、ビーストは指に付けた指輪をベルトに押し込む。

『ゴーッ! バッバ、ババババッファー!』

 ビーストが右肩にバッファローの頭部を持つ赤いマントを装着。
 地面を殴りつけると、その威力で衝撃波を発生させてディケイドを吹っ飛ばした。

「ぐああっ!」

「士さん、大丈夫?」

 立香は倒れたディケイドに寄り添うと、魔術礼装の力を使い傷を癒す。

「獣の国にビーストかよ。笑えないな」

 そんな愚痴なのかどうかもわからない言葉を溢しながら立ち上がる。

「待って、このままじゃ二対一で押し切られる」

 そんなことはわかっている。
 だが、具体的な打開策は浮かんでこない。

「おや、あれは手詰まりかな?」

 そんなディケイドの様子を、ディエンドは冷静に観察していた。
 さっきも咄嗟に戦闘方法で迷っていたくらいだ。
 ビーストも含めた二対一ではどうしもうないだろう。

 頼みの綱であるアマゾンオメガとやらはバロンの相手で手一杯のようだ。
 ある意味予定とズレる結果なのだが、この程度では皇帝ツァーリと戦うなど問題外としか言いようがない。

「残念だよ。正直、期待ハズレだ」

 何やらマスターと士で二言三言交し合っていたが、それも無視して二人へ向け発砲する。
 恐れてたじろぐマスターを庇うようライドブッカーの剣で弾を受け止めた。
 ちょっとした回復魔術は使えるようだが、あれでは焼け石に水。
 下手すると士の足手まといだ。

 それでも、多少動きの良くなったディケイドは、またこちらへと向かってくるようだ。
 それをバッファマントを装着したビーストが阻む。
 パワーを増した形態で、ディケイドへ突進を仕掛ける。

『FINAL ATTACK RIDE DE! DE! DE! DECADE!!』

 対するディケイドは前面にカードを展開。
 それをくぐって己自身を超強化してライドブッカーでマントごとビーストを両断した。
 倒されたビーストはその場で消滅する。

『FINAL ATTACK RIDE DI! DI! DI! DIEND!!』

 その間にディエンドもファイナルアタックライドを発動させていた。
 青緑に発光するカードが銃口から渦巻くように伸びていく。
 ディケイドもこちらへ銃へと切り替えたライドブッカーを向けている。

 威力がある分、こちらは発動が遅い。
 それでも当たりが同時ならば、確実に撃ち勝つのはこちらだ。
 加えてディケイドの回避は間に合わない。

 ――チェックメイトだ!

 勝利を確信してトリガーを引く瞬間。
 ほんの僅か先に撃ちだされたディケイドの弾がディエンドライバーに直撃して、その衝撃に思わず取り落とした。

「何っ!?」

「今だ!」

 更に二発目、三発目とディエンドの身体に命中。
 その威力に今度はディエンドが後方に飛ばされ雪の上を転がった。

「この速度と威力は……!」

「お前が言ったんだろう、海東。三対三だってな」

 なるほど、そういうことかとディエンドは理解した。

「マスター君の仕業だね」

 今のはディケイド自身の力ではない。
 マスターの援護による瞬発的な強化だった。

 油断していた。
 いや、侮っていたというべきだろう。
 魔術師とはいえ所詮はただの人間だと。

 事実、彼は戦闘中でも自分の恐れを隠し切れていなかった。

 よくやっても単発的な援護がせいぜいの実力。その考えは間違っていないだろう。
 しかし、

「士一人の旅ではないってことか」

 ならば可能性はある。
 後は向こう次第かと、ディエンドは視線を残る二人へと移す。

 バロンとアマゾンオメガの戦いは一進一退だった。
 バロンの激しい攻めを、アマゾンがいなしながら隙を突いて反撃をしかける。
 それをバロンがまた捌く。

 緊張感のあるせめぎ合いにも見えるが、段々とアマゾンオメガの手数が減っていく。

「どうした! そんな戦い方で強さを示せるつもりか!」

 わかっている。
 彼のいうことはもっともだ。と悠は思う。

 もっと激しく戦え。
 本当にそれでいいのか?

 良いも悪いもないだろう。
 攻めなければ勝てない。
 強いものだけが喰らう。

 ヤガの世界。
 とてもシンプルな在り方が許容される獣の国。

「っぐぅ!」

 バロンのスピアが肩を掠めた。
 微かだが血が飛び散る体が揺らぐ。
 均衡が崩れだしている。

 どうした!?
 力を示せ。
 強い者が喰らう世界だ。
 やれ、思い切り喰らえ。

 違う。
 冷静になれ。
 これはそういう戦いではない。

 心の中で沸々と獣の己が湧き上がる。
 攻めようとすればする程、自分が獣に染まっていく。

 理性でアマゾンの闘争本能を押さえて、自分の力と体を完全に制御する。
 鷹山仁の戦闘を見習い、時間をかけて磨き上げた戦い方だ。

 それが、少しずつ崩れていく。
 またスピアが掠る。
 今度はわき腹を。

 痛みがくる。
 痛いか。
 ああ痛い。

 だが、今度は退かなかった。
 ヤツの肩を引っつかんだ。
 槍を掴んで上から打ち下ろす。

 腹を蹴られて逃げられた。
 だが、いい。
 今のでいい。
 槍の長さは負けるが、こっちは小さい分こういう使い方もできる。

 バロンのスピアはヒレで止める。
 突く。
 突く。
 突く。

 二発は避けられたが、一発は当たった。
 バロンからくぐもった呻きが漏れている。

 痛そうだ。
 君も痛いんだな。
 生きているから痛い。
 生きている限りは痛い。

 痛いのは生きてる証だ。
 痛いな。
 お前も痛いだろう。
 だから生きてる。
 生きてるならやれ。喰らえ。

 ああ、中々当たらないな。
 なんでだ。
 防がれるからだ。
 相手の大きな槍に、自分の槍が受けられている。

 巧い。
 相当使い込んでいるのだろう。
 向こうの方が上手く武器を使いこなしている。

 そもそも何でこんなの使っているんだ。
 こんな槍があるから戦いにくいんだ。

 距離を詰めろ。
 切り裂け。
 喰らいつけ。
 突っ込もうとしたら先に正面から突かれた。

「ふんっ!」

 右か。左か。
 どっちに避けてもどこかに、当たった。
 痛。
 後ろへ跳ぶ。

 血が漏れている。
 浅い。
 刺さった瞬間に跳んで威力を殺したからだ。
 考える前に動いていたからだいやそれじゃあまた昔みたいにうるさい考えるなこれでいい余計な思考は無意味だ今は戦いだろ。
 ほら。
 敵がこっちに走ってきた。獲物だ。獲物じゃない。獲物だ。

「うおおおおおあああああああ!!」

 吼えた。
 何か握っている。
 体を反らして掴んでるものを思い切り投げつける。
 そうだった。これはこう使うものだ。

『バナナスカッシュ!』

 獲物の槍が黄色いオーラを帯びて投げた槍を弾いた。
 それを空から眺めている。
 獲物が投槍を避けず、迎え撃とうとしているのを見て跳んだ。

 落下先には槍を振り戻す前の獲物。
 振りかぶった腕を思い切り下ろす。
 腕のヒレが赤と黄色の鎧を裂き激しい火花が散った。

 斬られた獲物は怯んで膝を突く。
 まだやれるか。
 それとも餌になるか。
 どっちでもいい。獲物なら喰らうだけだ。

「悠さん!」

 背後から声が響いた。
 別の獲物か?
 振り返る。
 そこにいたのは立香だった。

 ああ、そうだ。
 立香と士は別の相手と戦っていたんだっけ。
 あっちは相手も含めて全員が立っているけど、もう戦ってはいない。決着は付いたようだ。

 バロンへと向き直ると彼も既に立ち上がっていた。
 そこまでの深手は与えられていないらしい。

「もう十分だろう。ここらが潮時でいいんじゃないかな?」

 海東がオメガに向かって声を投げかけた。
 正しくもっと先にいるバロンに対してだ。

「ふん、いいだろう。貴様達を強者と認める」

 バロンは周囲で観戦していたヤガ達と向き合い声を張り上げる。

「文句の在る者は前へ出ろ!」

「全然!」

「まったく!」

「ないっす!」

 ヤガ達は口々に同意していく。
 その流れを見て悠は変身を解いた

「やはりそうか」

「どういうことです?」

 現状に理解が追いついていない立香が問うた。

「バロンはこのロシアで大切なものは強さで、それを証明してみせろと言っていた。つまり話し合いがしたいなら、まず強さを見せてここにいるヤガ達を納得させろって意味だったんだと思う」

「なるほど。そういうことだったんですね」

 悠も組織的な姿勢は異なるが、反逆軍のリーダーだ。
 バロンの態度である程度の機微は察していた。

「なのに、僕は……」

 わかっていたのに、途中から本気でバロンを相手を倒そうとしていた。
 バーサーカーというクラスに反応して、アマゾン細胞が活性化しやすくなっている。

『大丈夫ですか、悠さん。傷が痛むのでしょうか?』

「いや、大丈夫。何でもないよ」

 静かに俯いた悠に、心配したマシュが声をかけた。

『それならいいのですが』

 一先ずはまだ抑えられている。
 何より今はアマゾン細胞よりも優先すべきことがいくつもあるのだ。

「士さん、さっきは呼び捨てにしてすみませんでした」

 戦闘中、一度だけ立香は士を呼び捨てにして叫んでいた。そのことを謝っているのだろう。

「いや、それでいい」

「え?」

「呼び捨てでいいと言ったんだ」

 既に通常の姿に戻っている士は、ぽんと立香の肩を叩いた。
 戦いにおいてマスターとサーヴァントの連携がどれだけ重要なのか、士も今回で理解した。
 今後、さん付けでほんの僅かに指示が遅れて、勝敗が左右されることもある。

 サーヴァントとして従属しようなんて僅かにも考えていない。
 普段なら年下相手に呼び捨てられたら容赦なく怒るのが士だ。

「どうやらカードに代わるお宝を手に入れたようだね」

 変身を解除したディエンドが、さっきまで敵対していたとは思えない朗らかさで士へと話しかけた。

「宝か……」

 士が手にしたもの。
 それは、共に戦うものとして呼び捨てぐらいは認めてやってもいいだろう。そう思えるだけの――いや、まだそこまで大層なものじゃないな。

「それより海東、なぜお前はカードが使えてる」

「それについては隠れ家でね」

「だったらさっさと案内しろ」

 いくらサーヴァントでも仮面ライダーは変身前だと大した強度を持たない。
 この場において、吹雪と風をしのげる場所に移動することを反対する者なんているはずもなかった。

「ようこそ無頼者の村へ。士とカルデアのマスター君。そしてその仲間達。案内しよう」

 最初に仕掛けてきた男が、今度は廃村へと向けて皆の先導を始めた。


前編と同じくらいの長さになる予定が、書き上げてみれば倍以上に……。
なお、サブタイトルの意味は海鼠なまこです。

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仮面ライダー感想・考察ブログも書いています。
小説と同じくらい力を入れていますので、よければ読んでください!

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