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● 世界が純白になってもQPと素材はいる

 その日、虚数潜航艇シャドウ・ボーダー内にて召還されたサーヴァント達が集っていました。
 騎士王とか英雄王とか東方の大英雄とか戦場の天使とかアラフィフとかロリ殺人鬼とかド淫乱尼さんとかロリヲタ海賊とかロリ化している性転換系万能の天才とか、統一感もクソもないし言葉にするとわけわからんのまでいます。
 そうそうたる顔ぶれですが原作通りなので致し方ありませんね。

 お前らいつ再召喚されたんだよとか、シャドウボーダーにそこまでの広さねーだろとか言っちゃあ負けです。
 きっとロリヴィンチちゃんが一晩でやってくれたのです。
 日本人らしく隣人に醤油貸すくらいの寛大な心を持って生きましょう。
 隣の家とか全部真っ白けですけど。

 そんな中、我等がマスター藤丸立香――通称、ぐだ子ちゃんが厳かな風を装うため、魔術協会制服を着込んで現れました。
 内側から溢れ出る庶民臭と、日本人のお約束的表現感のある童顔は隠しきれません。

 なお、最近増えた新しいお洋服では「極寒の寒冷地なめんなよ! 生足セクシーかよ!」と自分のふとももぺちぺちして、嬉しさを表現していました。

 全員を見渡すためみかんのダンボール箱に乗り……いや見渡せないですけどね?
 アステリオスとかバサクレスさん。後特にアニマル雷帝さん、ちょっと屈んでください。
 じいじも大概ですね。

 気を取り直してゴホンと一度咳き込み、彼女はスピーチを始めます。

「我々カルデアメンバーも無事新年度を迎え、カドッくんとか無事撃破&保護しました。拉致ちゃうぞ。
 拳でわかり合っただけです。日本人はタイマン張れば皆トモダチ、イイネ?
 ついでにアナスタシアも召還したので寝取られ展開一直線ですね、カドッくん。
 今後のFGOの薄い本が楽しみだね。

 おおっと脱線脱線。本題に入りましょう。
 我々カルデアはホワイト企業、もといホワイト機関です。お外のまっしらけのようにホワイティーなのです」

 実は部屋の隅っこの方にいるカルデア局員達が物言いたげな視線を向けています。
 徹夜、突貫作業、不眠不休という言葉が常日頃から踊り狂う彼らですが、そこはぐだ子ちゃん華麗にスルー。

「ホワイトなので休日もきっちりあります。
 我らカルデアはこれよりGWに入ります。入るのです。

 黄・金・週・間!

 ああ、なんて素敵な響きでしょう。
 歴史が焼却されようと、
 世界が漂白されようと、
 休みは休みです!」

 色々とツッコミどころしかありませんが、休暇と聞いてそれを喜ぶ者達はいません。
 この非常事態に何を言っているのだこの娘は。
 遊ぶところなんてねーよ。
 世界救う方が優先だよ。
 流石は英雄行為に反しちゃったり反転しちゃったりしている人もいますが、そこは英霊達、世界を救うために集った方々です。
 義憤に駆られる思いが溢れています。
 気骨以外の骨なら折りまくってでも世界のために戦う方々です。

 ですが英霊達とって、今重要なのはそんなことではなかったのでした。

「しかしながら休暇を過ごすにも流石に真っ白過ぎて、これではどこかへ遊びに行こうにもカルデア総遭難しか待っていません」

 せっかくの休暇も世界が驚きの白さ! ではおうちボーダーに引き籠もり、オセロで黒く染め上げるくらいしかやることがありませんね。

「そんな休みがあっていいのか。それのどこに黄金要素があるのだ! 皆様もそうお思いでしょう」

 皆様は何も応えません。
 けれどもぐだ子ちゃんは気にしない止まらないゴーイングマイウェイ。

「そこでこの藤丸立香、僭越ながら皆様のために一肌脱ぎとある企画を考えてまいりました。おおっと脱ぐという言葉に反応しちゃったKENZEN男子達は薄い本の平行世界でお会いしましょう」

 はい、ここで傍らに控えていた専属サーヴァント、マシュたんが英霊達にフリップを掲げます。
 ナイスアシストですね。

「題して『ぐだ子ちゃんの夢で魔神柱刈り放題ツアー』!」

 歴史焼却の戦い時代からいるサーヴァント達の大部分が『うわぁ……』というすごく嫌そうな顔をしました。

 皆の脳裏に思い出されます。
 集ったマスター達により何百万本と次々狩り倒され、その身をベリベリと剥がされていく魔神柱達。

 彼らの体は鳳凰の羽になり、竜の牙なり、骨になり、頁になり、鱗になり、スカラベのブローチになるのです。
 マスター達は狂喜乱舞しました。

 瓦解?
 終了?
 閉館?
 臨終?
 停止?
 消灯?
 閉鎖?
 違います完売です。
 36時間25分の販売期間でした。
 もっとだ、もっとよこせバルバトス!

 途中、狂える日本人の騒乱に足掻くゲーティアが根性出して柱が増量する事態に陥りました。
 しかし彼らは満面の笑みで、

「ありがとうございます!」

「神対応!」

「おかわりキタコレ」

 と口々に心からのお礼を述べました。
 しかし彼らの言語能力は狂喜と共に意図も容易く崩壊していきます。

「タノシイ」

「マジンチュウコロスノ タノシイ! タノシイ!!」

「ソザイタクサン!」

「ウレシイ!」

「ウレシイ!!」

 そこにあったのは歴史を守るため戦う人類史最後のマスターではありません。
 慢性的な素材不足を解消を快感に変えて、柱を虐殺し続けるラフムの群れでした。
 こいつら全員狂化EXにも程があります。

 そして最も美味しい柱を魔神柱ならぬうまい棒扱いで狩り尽くし、一瞬だけ正気に戻ったとあるマスターはポツリと零しました。

「殺したかっただけで死んでほしいわけじゃなかった」

 他のマスター達も同意の言葉と共に、乱獲によって絶滅に至った柱を惜しみ、追悼式会場まで用意しました。
 もっとも、マスター達にとって大事なのは、追悼よりも次の柱狩りでしたが。

 さて、マスターはそれこそ疲労も忘れてヒャッハーしていましたが、サーヴァント達はたまったものじゃありません。
 正しき歴史ではクリスマス目前で賑わう時こそが、ブラック組織カルデアが最もドス黒く漆黒に染まった瞬間でした。

 そんなヤツが大型連休を前にしていつになく張り切った顔していたら? 良い予感がするわけねーだろ! ってなもんです。

「ですが先輩、魔神柱は既に全て狩り……いえ全滅したというお話だったのでは?」

「ダイジョウブ、柱に変わるモノ・・が出たから……うふふ」

 興奮で朱に染まる頬に両手を添え恍惚に浸る表情のマスター。
 その美しくも淫靡な表情にマシュちゃんドッキドキです。
 他のサーヴァント達は(一部を)除き別ベクトルでドキドキしています。

「あ、なおこのツアーには強制参加特攻対象枠がいるのであしからず。今から読み上げますね」

 名を呼ばれたサーヴァント達は絶望に塞ぎ込んだり、天を見上げました。天井しかないですが。

「はい、特攻枠は以上のメンバーです」

 終わったのか? 残るメンバーは逃げられるのか? とぐだ子ちゃんの次なる発言が出るのを見守っています。
 特に二人・・の見つめ方は尋常ではありません。

「次はそんなものカンケーね―強制枠です。これは当然孔明センセーとマーリン……はいそこ逃げなーい」

 名前が呼ばれる前からダッシュをかけた二人。
 しかしなんということでしょう! 唯一の出入り口にはデミサバ化して回り込んだ後輩が!

「まだ退室は認められていません。『いまは遙か理想の城ロード・キャメロット』!」

 まさに鉄壁の壁で道を塞がれ、攻撃宝具を持たないが故に突破できない二人は同時に叫びました。

「「装備戻ってるじゃないか!!」」

 それに対してあっけらかんと応えるぐだ子ちゃん。

「だってオルテナウスあれ、使い勝手悪いんだもん」

 真理です。一片の曇もなき真理。
 新兵装のマシュが活躍するためにも二部での強化が待たれます。

 そしてサポーターズがもたついている間に、哀れ彼らは背後から捕獲されてしました。

「すまない。あなた達がいるといないとでは全体の負担が大きく変わるんだ。本当にすまない」

 腰が低いままですがガッチリ掴んで離さないすまないさん。ガチです。

「魔術師、テメエだけ逃げれると思ってんのか?」

 マーリンを捕まえたのはモーさんことモードレッド。
 本来敵対者である赤黒セイバー揃っての行動です。感動的ですね。

「ギャラハッドといい、僕円卓の騎士達に裏切られすぎじゃないかな!?」

 柱狩りにて全サーヴァント中ダントツで働かされた孔明さん。いやマジ当然のアクションですね。
 マーリンは安全地帯だったとはいえあの現場は観ていましたし、召喚=過労死枠です。そりゃ逃げたくもなるでしょう。

「二人ともありがとー! センセーはもちろん、マーリンには今回も声が枯れるまで王の話をしていただきましょう」

 こうして一週間の地獄(ぐだ子ちゃん的にはボーナスステージ)が開始されたのです。