『突如球太郎の砲撃がの幅が広がったぁ!』
『直射型から広域直射型砲撃に変化しましたね。流石はロボ、効率を優先した攻撃手法と言えるでしょう』

 この攻撃方法は、データバンクにあるなのはちゃんのディバインバスターのバリエーションと似ていた。収束率が下がり威力もランクダウンするが、その分より広範囲に攻撃が可能となる。

『私が受けても良い砲撃は、なのはの砲撃だけだ!』
『こんなのヴィータちゃんのおっきくて硬いハンマーに比べたら、全然大したこと無いよ!』

 先程の鬱憤を晴らすように、さり気なくアフレコがエロスになってきているぞ。これは酷いもっとやれ。

『アフレコに下ネタが混ざってきましたね。さっきボケ損ねた分早めにネタを差し込んできたのでしょう』
『その解説はいらん』

 突然攻め方が変化したため皆一様に驚いてはいるが、そこは一流のプレイヤー達だ、それぞれシールドと回避で冷静に対処していく。
 ただ一人、非戦闘型の魔導師である湖の騎士を除いては。

「キャアアアア!」

 球太郎の砲撃の直撃を受けたシャマルさんは、こちらまで聞こえる悲鳴を上げてその場に跪いて苦しみだした。
 すぐに仲間達が駆け寄よろうとするも、球太郎の砲撃により思うように進めない。
 たとえ近くまで行けたとしても、どうすることもできないだろうが。

 そして、俺達が待ちわびていた時間がやってくる。
 シャマルさんからバリアジャケットが、光に変わった。さらに下に着ていた本来の着衣である水着も、同様に光となって球太郎へ吸い込まれるように消えていく。

『ゴ―――――――――――ル! ゴール! ゴール! ゴール! ゴール! ゴール! ゴール! ゴール! ゴ――――――ル!』

 ついに女体の神秘が、俺達の眼前に隠すことなく公開された。
 シグナムさんの体は実際に見れた時間は僅かだったが、例えるなら有名な芸術家によって極限まで作りこまれた彫刻だ。
 それは一切の無駄の無い引き締まった美。鍛え上げられた肉体の上に乗る、女性特有の柔肌である。
 騎士としての機能美と、女性としての肉体美の両方を絶妙なバランスで保持していた。
 胸についているあれが騎士として無駄? あれは無駄じゃない! スイカだ! 人体の奇跡だ!

 シグナムさんと比べるなら、シャマルさんは自然の力が作り上げた天然の逸品と呼ぶべきだろう。人為的な加工では出せない美しさが、彼女の肉体には宿っている。
 決して肥満などではないが、柔らかそうな印象を持つ白い肌。これはこれで、危ういバランスの上に成り立つ均整の魔であろう。
 誰もが彼女のあの柔肌を見たなら、優しく抱きしめて最高の感触を味わいたいと思うに違いない。

 胸にゆれる果実は瑞々しいメロンといったところか。近付けば妖艶にしてとろけるような甘さが漂いそうな、そんな気さえしてくる。
 さらにはあのサイズで崩れることのない張りと形だ。

 まさしく芸術品。
 まさしく美の傑作。
 彼女達を作り出した者は、神域に達していたと言っても決して過言ではない。

 その芸術品のたわわな果実が、荒い呼吸に合わせて揺れる。ぷりんだ。ぷりんが揺れている!
 あえて平仮名で表すくらいの滑らかさ。しかも揺れるたびに、先端の桜色がそれぞれ一筋の線を描く。

『おっぱい! おっぱい! おっぱい! おっぱい! おっぱい! おっぱい!』

 コンマ一秒のズレも無く三人の漢達は腕を上下に振る。それはまさしく、かのジョルジュ長岡の如きだ。今の俺達ならば、おっぱい道八段範士にだってなれるっ!
 滅多にまとまらない三人の心が、一つになった瞬間だった。今ならゲッターロボの合体だって完璧に乗りこなせるかもしれない。

 ようやく平常を取り戻した彼女は、必死に二つの果実と、表記しちゃうと人としても色々アウトになるから言うに言えない部分を、腕で隠しへたり込む。
 無理矢理片手で隠してるわけだから強引に胸が寄せられて、それはもう大変にピーチなことになっているわけだ。
 どうあっても隠しきれない下のピーチもまた、普通とはちょっと違う意味で食欲をそそられてしまう、神秘の一角であることを忘れてはならない。

 隠すが故に隠す前より扇情的になってしまうポーズに、羞恥に染まって真っ赤な耳。駄目押しとして涙で潤んだ瞳。
 これはもう湖の騎士シャマルじゃない! メロン神さまるさんだ! 言ってる本人すらも理解不能だがさまるさんだ! 大事なことなので二回言いました。

 そのおっぱいさまるさんが戦線離脱、正確には更衣室あたりに非難したところで、実況に戻ることにした。
 全力全開の反動で一時的に魔法が使えなくなったなのはちゃんや、先に離脱したシグナムさんも共に同じ場所に居る。

 なのはちゃんはともかく、シグナムさんとシャマルさんの二人は、下着付けずに服着るのだろうか?
 やたらと下半身がスースーして、本人も気付かないうちに顔が上気して落ち着かない様子で下ばっかりに気がいってしまう。それはそれで、マニアック路線として大歓迎だ。
 ああもう、妄想がノンストップで話が進まないっ!

『ついに球太郎の毒牙によって二人目の犠牲者が出てしまいました! 次は一体誰が『さて、そろそろ行くか』
『そうね』

 俺の実証に途中で割り込んだ修一の一言に、鏡が同意した。
 俺だけが会話についていけず、間抜け面を晒して二人を眺めている。

『どこに行くのさ?』
『目の前でやってる戦場』

 と、修一があっけらかんと答えた。

『何しに行くのさ?』
『丸いの討伐に』

 さも当然の如く、鏡が続く。
 ナニイッテンノコノヒトタチ?
 何故だ! 何故こいつらは一生に一度しかないだろう、神聖な祭を早々に終わらせようとする!?

『まだまだこれからじゃないですか!』

 衝撃と悲しみの余り、思わず敬語になってしまった。それだけ俺のショックは大きい。

 そう、あの場にはまだバリアジャケットに身を包んだ、麗しい三人の少女が戦っているのだ。
 あの戦場に飛び込むにしたってまだ早い。ここはも暫く様子見をすべきだ。まぁ最後まで俺は行きたくないけど。

『残ってるのは年端も行かない子供達だろうが!』

 なんと修一に説教された。
 一人だけ正しくはロリババアな気がするが、見てくれと精神年齢的に見逃すことにする。見たいものは見たいんだ!
 だから俺は言うのだ、声を大にして。

『だがそれが良い!』
『死ね。氏ねじゃなくて死ね』

 質問に即答したら鏡にガチ罵倒された。ネタがわかるからどうでもいいけど、その台詞は会話じゃ意味を持たないよ?

『お前はあの子達が必死に戦ってるのを見て何も思わねぇのか!』
『戦う魔法少女って素敵だね! そして脱ぐ魔法少女はもっと素敵!』
『お前が末期患者だということは良くわかった』

 またも即答したら、今度は質問者の修一本人から諦め混じりの答えが返ってくる。ついさっきまで一緒に腕を上下に振ってた仲なのにぃ。
 俺は間違ってないはず! テレビで『この後すぐ!』って謳い文句より、『この後ぬぐ!』の方が心惹かれるだろう? つまりそういうことだ。

『だいたい、あいつ片付けないと次に狙われるのはどうせ俺達だ』
『だったら狙われてからで……』

 そもそも彼女達が時間まで逃げ切れば、何の問題も無いだろうに。

『先手必勝だぜ!』
『飲むものは飲んだし。あれとなら中々楽しく踊れそうじゃない』

 これは何言っても無駄だな。こいつら基本的に戦闘狂なので、一度火が点くと歯止めが効かなくなる。

 二人は荷物入れの袋から修一は携帯電話を、鏡は右耳だけのピアスを取り出した。
 どっちも待機状態のデバイスだから問題だ。鏡はそんなに珍しいタイプでもないが携帯電話って……。どこのマスクドライダーだよ。なんたらブレインの回し者め!

「行くぜぇ、セェェェットアップ!」
「ふふ、始めるわよ、セットアップ」

 片や燃え盛る正義感で、片や狂気にも似た好奇心から二人はバリアジャケットを身に纏う。
 修一のバリアジャケットは一言で言い表すなら黒に近い緑の鎧。それも騎士よりは武士に近い。
 だがその様式は無骨ではなく流麗であり、防御能力と動き易さを兼ね揃えた設計だ。

 右手には刃の無い一振りの刀。その名は偽刀虚(ぎとううつろ)。偽の名を与えられた一刀のアームドデバイスの真価は、これから発揮されることだろう。
 軟派にして硬派なる偽剣士が戦に出陣する。

「斬りごたえはありそうだ」

 鏡は、何と言うか、いつもの普段着とあまり変わらない。やたらめったにフリフリの多い黒と白が基調のゴスロリルックだ。飛び回ることを配慮して、スカートの下にはスパッツを着用している。

 男のくせにやけに似合うことについては、もう慣れたよ。諦めたともいう。
 手には紅いギター型アームドデバイスのクレイジーディザイアが握られており、顔半分はピエロのような仮面が覆っている。
 メンバーじゃ唯一、輪廻さんオリジナルのカートリッジシステムを積んでいる、安全性を度外視した威力重視で古代ベルカ式の使い手だ。

「満足させないと許さないわよ!」

 狂気の宴を求めて道化師が舞踊る。

「さあ始めるぜ、拓馬! 鏡!」
「え?」

 修一が俺の右手を掴む。俺はとっさに巻き込まれたくなさから抵抗しようとするも遅かった。

「野郎共、派手に暴れるわよ!」
「いや、せめて君らだけで行きなよ。ほら俺はこういう団体戦とか向いてるタイプじゃないっていうか、イエスロリータノータッチという格言がだね」

 俺の言葉をまるっと無視してお次は鏡が左側を掴む。
 必死に抗っても、腕が抜ける気配は全く無い。当たり前だ、こっちはまだ何の準備もしていないのだから。

「GO!」
「ぎゃあああああ!」

 二人が叫びながら同時に飛行魔法を発動させて飛び上がり、俺は何も用意しないのまま強制的に浮かび上がって運送される。バリアジャケットどころか海パン一丁だよ!

「いや、ちょっと、死ぬから。死ねるから」
「だったら働いてきなさい!」

 鏡が追い打ちをかけるように言葉を追加し、二人同時に俺をぶん投げた。
 もう浮遊感とか、そんなレベルの話じゃない。風を切り一人戦場へと突貫していく。

「うわああああ!」

 人間砲台暁拓馬は今日も元気です。