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『劇場版 仮面ライダービルド Be The One』感想 桐生戦兎という人間の空虚を埋める物語

2019年1月7日

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※当記事は前ブログから引っ越してきた記事を加筆修正したものです。

朝から高校野球やっていておのれえディケイド! ビルドの世界も以下略(風評被害)となっていたら、そもそも今週はビルドお休みでした。

そんなわけでそのまま映画館へゴーしてビルドの映画を堪能してきた次第です。
ストーリーは45話と46話の間。
本編とそのまま繋がっているので仮面ライダーWと同じ方式でしたね。

45話の放送までは、最後の実験というフレーズから今回も最終話の後日談かと思ってました。
特に観なくても本編で困ることはないけれど、46時点で違和感のあった部分の説明はしっかりしてくれています。

結論から言うと、葛城巧をほぼ生まれ変わらせるように作られた桐生戦兎とはどういう存在なのかを突き詰めて答えを出した作品でした。
宣伝では戦兎と龍我の友情物語という要素を大きく取り上げていましたが、そこはむしろ薄味だったなあという印象。
視聴前と後では、作品に対するイメージはかなり大きく変わっていました。

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戦兎と龍我の関係について

今回の話は意外な程に、戦兎と龍我の直接的な関わりが少ない。
劇中で戦兎が龍我と会った時は、もう龍我がマインドコントロールされていた。
龍我を助け出す瞬間も言葉的な説得はなく完全に物理だったので、全体的に二人の友情が強調されるシーンは戦兎の回想と決着後のシーンくらいである。

ただ薄味でも本編の積み重ねがあるので、ポテトチップスのうす塩くらいにはちゃんと味が付いている。
(人によっては丁度いい的な意味かもしれないという意味も含む)
そのため、ストーリー的に大きな問題かというとそういうことでもない。
むしろ本編で育んできた友情の結論を映画で出したようなイメージだった。

ただ、クローズビルドフォームの流れは、龍我との友情を感じさせるものが無かったのは残念だった。
アイテムの解析に奮闘したのは戦兎だけで、最後に奇跡を起こしたのはベルナージュがクローズビルド缶を生み出したから。
龍我は変身時にあたふたしてただけで、むしろギャグ要員だった。
いや面白かったけどね、あのシーン。

フォーゼのメテオフュージョンステイツのように、過去に助けて友達となった皆が今度は逆に弦太朗の窮地を救う。
そういう感じの、ベタでもグッとくるシーンがあれば作品の評価は大きく変わっていたと思う。

クローズビルドとブラッドの戦闘シーンはCG演出をふんだんに使った劇場版らしい派手さもあり、非常に見応えがあった。
だからこそ、それに見合った前振りが欲しかったというのが正直な感想だ。

ただし龍我個人の活躍は絵的に見所が多い
敵になってグレートクローズで戦うシーンは雰囲気出ていて良かった。
デザイン好きだけどTV本編の出番が少なかったので嬉しい。

恋人を死に追いやった存在にぶち切れし、クローズマグマが敵と一進一退の攻防を繰り広げるシーンも見ていてテンション上がった。
むしろ龍我はここが一番熱かったとさえ思う。

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戦兎と巧

逆に本作で一番力が入っていて、かつストーリー的に見所だったのが戦兎と巧のやりとり。
そして桐生戦兎という人物の本質に迫る話だった。

桐生戦兎は記憶を抜かれて正義感の強い青年としてラブ&ピースを目指し戦い続けてきた。
仮面ライダーを戦争の道具として生み出してやさぐれていた巧とは、大きく性格が変化している部分があり、だからこそ戦兎はヒーロー足りえている。

しかしそれは巧の抱えている仮面ライダー開発における闇を、戦兎が共有していないためだ。
この二人が同一人物でありながら心の中で明確に分裂してしまっている理由はここにあると思われる。

そしてスタークは根底にある正義感を植え付け面倒を見ていた。
最初に龍我と出会うよう画策したのはスタークに協力していたブラッド族だった。
戦兎の人格、そして龍我との友情は必要だから意図的にデザインされたものでしかない。

言わば桐生戦兎という人格そのものが戦争のため、そしてスタークの計画のために生み出されたもの。
戦兎はその現実を突きつけられた上で、巧に相棒である龍我の存在を否定される。

龍我もまた戦兎同様に意図的に育てられ、生き方を操作されていた存在だ。
葛城忍は切札という扱いをしているが、同時に敵となれば非常に危うい存在でもある。
実際、敵になって戦兎は窮地に追い込まれている。

しかし龍我は、辛い戦いをずっと共に乗り越え続けてきた相棒。
記憶を失った後の戦兎だけを知り、最も身近で彼を肯定し続けてきてくれた。
その感情、そして信頼には誰の意図も介在しない。
戦兎の生きてきた結果そのものなのである。

戦兎にとっての龍我とはまさにベストマッチの存在なのだと至った。
そしてもう一つ、戦兎と巧の間にある溝が父親、忍の存在である。

巧は父親に従いライダーシステムを作り上げた結果、戦争が起きてしまったという負い目と後悔が、深い爪痕となってしまっていた。
そりゃ自分が悪魔扱いで事実上の戦犯ではそりゃ信頼だって揺らぐ。
結局この溝も巧だけが持つライダーシステム暗部の記憶なのだ。

だから父親と向き合い答えを探す役割が巧ではなく戦兎に与えられた。
父親との別れ際の言葉は、戦兎と巧が共有している部分の記憶だろう。
巧はそれを心の奥に押し込めて、戦兎だけが信じぬいた結果、最後の答えパスワードに至った。

結局、巧が暗部を一人で背負っているから戦兎は前を向き続けられる。
この二人は同じ源流から分かれた同一存在。ラビットラビットタンクタンクのようなもの。
互いの存在がなければなり立たないベストマッチなのだ。

本作は桐生戦兎という人物が、誰かに作られた虚構から脱却して、一個人の証明へと至る物語としてはとても良い作品だった。
ただそこに特化し過ぎているきらいがあって、面白いんだけど全体的に見ると色々と惜しいところも多い作品である。

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[犬飼貴丈×脚本家 武藤将吾×大森敬仁 プロデューサー×上堀内佳寿也 監督]

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