本当は4巻出るまでに1~3巻一冊ずつレビューしようと思っていたのですが、デスマが断続的にやってきたり思いの外まとまらなかったりで頓挫していたら4巻来ちゃったよ!
という状況に。
で、4巻を読んだら1~3巻が第1章、4巻以降は第2章と捉えるとするりとまとまったので、1~3巻をまとめてレビューしよう! ということになりました。
何で4巻以降が2章っぽいなと思ったのかは次回の4巻レビューに行おうかと。
実のところ1巻のレビューは前に一度行っておりますが、2~3巻と合わせて読むと全体の流れからまた違ったものが見えてきますので、そっちを重点的に。
全体の流れを超大雑把にまとめると
・1巻
ヒラノが邪神に転成して、魔王ドラクゥと共に歩む覚悟を決める。
・2巻
ヒラノがドラクゥと別行動を取り、塩を輸入するルートを確立する。
ここら辺から神々の作ったルールの構造も見えてくる。
ドラクゥは大魔王宣言ヒャッハー。
・3巻
塩の流通により魔王助かる
ヒラノが神界についての知識を深めていくも、体調不良に陥り最後は完全にダウン。
1巻の初期だとヒラノとドラクゥは最低限の干渉で自分の目的を優先しようとします。
しかし最終的には互いに存在を認め合い、共に行くことを決意しました。
二人の関係性については、そこまでの流れにけっこうガッツリ一巻まるごと費やしていましたね。
2巻になるとヒラノはこの世界の人間への興味など他の動機もありましたが、ドラクゥを助けるために自ら別行動を志願し、最終的には塩の交易ルートを作り出します。
早くも相手のために別行動を取り、なおかつそれを信頼されるだけの関係が構築されています。
個人的には別行動までもう少し話を挟んで、二人の絆を強調するシーンを入れてもよかったかも。
特にヒラノはドラクゥを助けるという目的に行動の大部分が割かれており、ある意味死活問題であるカルマを貯めて借金返済すら後回しにしてさらに借り入れようとまでしています。
魔界で進行されても徳(カルマ)が増えず人間そのものが借金返済のキーになる存在とはいえ、かなり無茶をしていることに変わりありませんね。
ここまで先行投資できる人間なら、ブラック企業なんぞに勤めず順当に出世していれば大物にもなれただろうに……。
とまあそれは置いておくとして、2巻では1巻では見えにくかった、この作品全体を通してのテーマ的なものが見えたように思います。
全体を通して一貫しているのが、互いに信頼しあって場所は違えど互いのことを考えながら道を進むヒラノとドラクゥ。
まさに共に生きる「共生」こそがこの作品の大きなテーマではないでしょうか。
この二人だけでなく、城の壁を補強しないことを信頼の証として攻め込まれたならすぐに救援を送り共闘するゴナンの軍勢。
1巻だと絆を結び直した人熊族と彼らの邪神との関係を再構築させる話も、その一つとして数えられると思います。
またこのテーマは敵サイドにも共通して言えることで、北の覇王には強力な神である黒髪姫が自ら戦に出陣しています。
1巻では途中までただの噛ませ犬とすら思われたリ・グダンにも、サーフォートという信頼できる存在が現れました。
個人的にはこの二人の関係は結構好きです。
3巻だとヒラノに影響されてオクリ神もリ・グダンに対して思うことができていました。
こいつ、状況は悪いのだけど悪運尽きねーな。
それとは逆になるのが、大物ぽさがあったパルミナがたった2巻で討たれたことです。
彼女は側近を全て自分の種族で固めてこそいましたが、本質的に信頼していた部下や仲間は最後までおらず、頼れる部下もないままにドラクゥの罠にはまっての退場です。
自分の欲を優先して誰も信用しない者はいざという時に弱い。という印象を持ちましたね。
後、どうでもいいけどエロ要因なのにいまいちエロシーンの少なかったなぁ。
鎧着てるあの挿し絵はセクシーと言うよりババア無理すん(ry
そして、この流れは3巻になりもっと大きな、物語全体を押し進める要素となっていきました。
その最大の契機はダークエルフ族との和睦です。
これまでの古いしきたりや、それによる壁を破壊し新たな関係を築いていくことを選んだドラクゥ。
そうして新たな仲間と絆を得ることもまた共生に繋がっていくのでしょう。
別視点から見れば、ドラクゥの敵は北の覇王という存在だけでなく、覇王を支持する旧体制そのものとなっていくわけです。
そして、共生というテーマと対をなす存在がオイレンシュピーゲルです。
キリックの信仰を利用し、結果として彼の中にあった神と共に生きる意志を破壊し死へと追いやった要因になりましたし、絆を大切に扱うヒラノからは拳をもらうことになりました。
もっとも、彼の真の腐れ外道っぷりは4巻からが本領発揮ですけど。
とまぁ、ざっと振り返りましたが、ドラクゥは1~3巻の間で没落魔王から大飛翔してますね。
ただ体勢を立て直しただけでなく、大魔王と名乗り魔王しての自分の在り方を見つけました。
そしてもう一人主人公であるヒラノは、ドラクゥの躍進を陰から支え結果ぶっ倒れました。
ヒラノが倒れるまでも割と段階を踏んでいるのですけどね。
結果だけみるとドラクゥが駒を進めるごとにヒラノにかかる負担が総じて大きくなり、ついにバーストしたのが3巻のラスト。
実は軽くシーソーゲームになっていた二人でですが、共通していることは自分の進むべき道と敵対する相手がはっきりしたということでしょう。
ヒラノもまた、ここまで来るのに神界の旧体制の在り方に対し大きな疑問を抱くことになりました。
神界と地上世界との繋がりを絆と共に紡いできたヒラノにとっても、それを否定する神界の体制は敵と呼ぶべき代物だったわけです。
互いに互いの絆と道、そして反する存在を確固たるものとしたのが一章なのでした。
というわけで続きはWeb……じゃなくて4巻で。