明日アニゴジ2観に行く予定なので、
今日の内に『GODZILLA 怪獣惑星』の感想を書いておこうと思います。

ゴジラの枠を破壊した『GODZILLA 怪獣惑星』

これまでのゴジラ作品は、
現代に巨大怪獣が現れて文明を破壊するという流れでした。

それはシン・ゴジラが掲げた
『現実 対 虚構』というキャッチフレーズからも察することができます。

本作のゴジラ怪獣惑星では人類の文明が滅んだ後。
自然に還った世界が舞台です。

人類側の兵器も異星人の技術が含まれており、
完全なSF作品となっています。

主人公はゴジラに両親を殺され、
地球を追われ復讐心を燃やす青年。

ストーリーも設定も特撮感がなく、
最近人気の要素を盛り込んだ若者受けアニメとして構築されているという印象。

ただし、これに関して私は肯定的です。
特撮でやるべきことを無理にアニメでやる必要はないと思っています。
それをやってもシン・ゴジラの劣化版になって終わりですしね。

怪獣惑星は特撮を観ないアニメ好きの層をメインターゲットにして、ゴジラに触れさせようとしているのです。

私にとってゴジラという作品の評価基準は以下の三つ。

1. ゴジラという破壊者に対する描写
2. ゴジラに対抗する存在の描写
3. ゴジラに対する人間達の描写

1と2の要素では結構高評価なのですが、
3の部分でかなり評価を落としています。

そもそもアニメ版がゴジラの枠を越えている存在なら、評価基準も変わるのでは?
という声もありそうですが、
ゴジラという看板を掲げている以上はゴジラです。

それを省いてしまうと、
エメリッヒ版ゴジラが『ゴジラとして見なければ名作』といっても、黒歴史という事実からは逃げられないと同じ。
あれはなんと言い繕っても永遠にマグロ食ってるジラザウルスなんですよ。

キャラの掘り下げが薄い

先にここはすごく残念だったなという部分。
SF設定や武器、ゴジラについては、
SFの造詣があまり深くない私でも、
かなり丁寧に作り込んであるなあと感じました。

逆に人物描写やキャラ付けはかなり強引かつ雑だったなと思います。

まず主人公について。
彼はゴジラと現状の人間達に対して、かなり深い憎悪と憤りを燃やしています。
周囲から見ても完全に浮いており、
異端者という扱いです。

その姿に共感できないという感想の声もちらほらありました。
私も彼についてはなんだかなあと思ったクチです。

彼のキャラクター性は『ゴジラ版エレン』この一言でほぼ説明できます。

どんな手を使ってもゴジラを倒すという執念。
そしてゴジラに屈して、
劣悪な環境で諦観すら見える現状についても、
彼は牙を剥いています。

これ、まんま進撃の巨人の世界観に置き換えられます。

しかし彼にはエレンのような共感性が得られない

その理由は純粋に憎悪を抱く理由。
そして本格的にゴジラと敵対するに至るプロセスの描写が薄いからです。

家族をゴジラに殺された。
という理由は憎悪する理由としては十分です。
しかしその描写がものすごくアッサリして、
家族を失った無念は心情的にもあまり語られない。

ただただ憎む描写だけを重ねられるので、憎悪の塊に見えて共感しにくいというのがあるでしょう。

ゴジラを倒すための独自研究は大筋結果論だけを描写しています。
これは執念よりもゴジラという存在をSF的に解釈する手順として描かれている感が強いです。
ゴジラを解析してどうやって倒すかという部分ですね。

この調査した結果の出来は良いんです。
出来が良いからこそ、
調べ研究している描写が少なさのせいで、
そこに至るまでの精神的苦悩が足りない。
結果リアリティが不足する。

ハルオが調べられた理由も説明されており、
理解はできるのです。

でも欲しいのは理屈だけじゃなく、
そこにあるだろう苦悩や葛藤なんですよ。

そういう頭の良いカッコよさじゃなく、
エレンのような泥臭さがない。

実感のなさが共感できない理由になっています。

ヒロインもヒロインらしい描写もなく主人公の近くに置かれるため、なんでいるのかよくわからない。
単に一個の作品としてヒロインは必須なので出しときましたって感じ。

一番酷かったのは出世のために地球へ下りて、作戦指揮をしていたエリオットですね。
想定外の事態に遭い真っ先に帰ろって言い出した野郎が、その後で突如ゴジラに特攻。

揉めていたハルオを生かして、ゴジラを倒す大きな切っ掛けを作りました。
ここだけ書くと熱い良い話です。
でも本当に突如行動するので、その間にあったはずの、命を捨てる覚悟で挑んだ理由がわからない。

お前さっきまで自己保身と出世欲に精を出すキャラだったやん!
脳内保管すらできないぐらい、行動に繋がりが全然ないのでキャラとしてチグハグ。
ストーリー上、ハルオに指揮官移す必要があるので殺しました感出まくりで酷い。

こんな感じで、全体的にキャラはストーリーを動かすために配置した駒みたいな印象。

私がまともに共感できたのは、
リアルタイムでゴジラの囮として命を張る航空戦力だけでした。

もう30分尺があって、心理描写もしっかり書き込めば、本当に名作になれたんじゃないかなと思います。

植物系ゴジラは新たなる神の形

ゴジラという怪獣はただ暴れるだけの存在ではなかったため、ここまで高い人気を得てきました。
私的にそれは以下の要素にまとめられます。

・怪獣王
・文明の破壊者
・神の化身

東映にはゴジラ以外にも様々な怪獣が存在します。
しかしその中でナンバーワンといえば、
やはり多くの人がゴジラを連想するでしょう。

中にはスペースゴジラなどゴジラをかなり追い詰めた存在もいますが、それはゴジラが破るべき壁としての存在として描かれています。
ゴジラという存在ありきなわけです。

これが怪獣王たる要素なわけで、
2016年ハリウッド版ゴジラでも、
最後は怪獣王と讃えられていました。

怪獣惑星では地球を捨てる前は、
ゴジラ以外にも様々な怪獣が登場しました。

しかしその中でもゴジラはどうあがいても勝てない存在。
二万年後でも頂点に君臨し続ける、
まさしく怪獣王です。

オリジナルのゴジラは、
水爆実験から生まれています。
そして放射能を撒き散らしながら町を破壊します。
水爆や原爆というものの恐さを知らしめる意味でも、文明の破壊する恐怖の象徴でした。

今回のアニメ版ではどうかと言うと、
自然の生態系そのものに直接関与して、
ゴジラと同素材の動植物が生じています。

人間の文明を完膚なきまでに破壊して、
自分を中心とした世界を構築したのです。

文明ブレイカーとしては間違いなく歴代ゴジラ最強。

神という意味でも、
自然災害の権化ですから、
まさに神の化身。

ゴジラっぽくないとかなんやかんや言われてますが、ゴジラを構成する要素はしっかり守っていると思います。

特にラストに出てくるギガサイズのゴジラが、人間にとって如何に理不尽な自然災害であるかを表していました。
これはアニゴジの植物設定だから許されるギリギリの行為って感じがしますね。

同時に周りが森とか緑ばっかで、他のものが戦闘機とか比較的小さな物なため、比較物がなく超サイズがちょっと活かしきれていない。

だから尻尾のソニックブームとか雄叫びの衝撃でサイズ感出すしかなかったのでしょうね。

次回は僕らのメカゴジラさんが出陣っぽいですが、ゴジラさんおっき過ぎて対比すると宿敵っぽさが薄そうでちょっと心配。